神戸市北区の路上で2010年10月、堤将太さん(当時16歳・高校2年)が殺害された事件で、殺人罪に問われた元少年(33・事件当時17歳、記事中では「男」と表記)とその両親を相手に、損害賠償を求めた裁判で、神戸地裁は3月19日、将太さんの両親に約9300万円、きょうだい3人に各110万円、計約9600万円の賠償を命じた。
しかし、男の両親をめぐる監督責任や、逃亡をほう助した責任については認めなかった。

事件は2010年10月4日夜に発生。将太さんが突然、面識のない男にナイフで複数回刺され死亡した。男は10年10か月の逃亡の末に逮捕・起訴され、刑事裁判では昨年(2025年)10月14日、最高裁が上告を棄却し、懲役18年の実刑が確定した。

この民事裁判で将太さんの父親・敏(さとし)さんと妻・正子さんら遺族は、「両親が男の監督義務を怠ったことが事件を招き、転居するなどして発覚を遅らせた」と主張していた。男の事件への関与について、両親がどう認識していたかが争点だった。
男は事件直後、当時生活していた神戸市北区から、かつて居住していた千葉県への転居を申し出たことが明らかになっている。さらに男が事件の2か月前、交際相手の女性をドライバーで刺したり、電車内で乗客に暴力を振るったりしており、暴力性がエスカレートしていったことも判明。
こうした事実を踏まえ遺族は、「犯行当時、未成年だった男が10年10か月逃亡していたのは、両親も“逃亡を手助け”していた可能性が高く、監督責任も問われるべき。今だに明確な犯行動機がわからないし、なぜ逃げたのかも知りたい。遺族としての思いは、賠償金ではなく、真実を突き止めたい」と話していた。いまだに遺族のもとに、男から正式な謝罪の言葉は届いていない。

判決で神戸地裁は「男は事件直後、家族に対し『刺してしまったかも知れない』と述べていた。両親は(男の)事件への関与を疑いながら、その後否定するようになった男の言葉を鵜吞みにして転居したのは、客観的にみると逃亡に寄与し、検挙が遅くなった一因といえるが、確定的に認識していたとまでは言えない」などと指摘した。
一方、両親の監督責任を認めなかった理由として、「元少年が暴力的な傾向を見せた時期があったが、精神科のカウンセリングを受診させるなどの対処をしていた」などとした。

「(犯行時)17歳の元少年が、自分の意思だけで10年10か月もの間、逃げ切れるのか」。長期の逃亡期間に成人になった。しかし世間に名前は明かされていない。少年法の壁が立ちはだかった。あくまでも「元・少年」。
さらに、10年10か月間も逃げ続けた罪をどう問うのか。刑事罰としてとらえた例はない。成人の犯罪ならば、特徴的なものとして2件が挙げられる(※)が、刑事裁判で逃亡について情状面で考慮したに過ぎない。敏さんと正子さんが、代理人弁護士とともに悩み抜いた結果が民事裁判だった。




