このあいだ、馴染みの市場の魚屋さんで、水を張ったトレイの中に入っている“あさり”を見ていたんです。
一般的には、貝の隙間から2本の筒みたいな部位がチョロっと出てますやん? あれがビローンと伸びはじめ、さらにビローンとどんどん伸びてきて貝そのものの大きさの2倍以上にもなっていくやないですか。

「こんなに伸びるんや〜」と感心しながら見ていましたら、魚屋さんの大将がやってきて、「伸びとるやろ〜。それな〜、もっと伸びるんやで〜。貝の3倍くらいの大きさにビローンと伸びるんやで〜」とひと言。さらに、その部位についても説明してくれました。
この2本の筒は、“入水管”と“出水管”というのだそう。入水管から海水を吸い込み、そこから酸素やエサを取り込みます。そして、取り込んだあとの余計なもんやフンを反対側の出水管から出すのだとか。
大将は、「口の横にお尻が並んでセットされているような部分なんや」と笑いながら解説してくれました。
私も笑いながら、「この2本の管はそっくりですけど、どっちが口でどっちがお尻?」と質問。すると大将は、「めんどくさいやっちゃなあ」と苦笑いをしながら、「2枚の貝殻がつながっている“蝶つがい”のほうにあるのがお尻で、その下の貝が開くほうにあるんが口や!」と付け加えてくれました。

「へーっ!? 上がお尻で、下が口!? 人間と逆ですね」と驚く私に、大将はさらにめんどくさそうな表情を浮かべなら、「私の説明が悪かった! 貝に上も下もない! ごめんごめん」と言いつつ店の奥に戻りかけたので、「ちょっと待って!」と言わんばかりにさらに質問を投げかけました。
「普段、この部分はチョロっと出てるだけやのに、なんか今はビローンって出てるやん。なんでこんなにビローンと伸ばす必要があるん?」
この疑問を聞いた大将は、“この質問を最後にしてな”的な表情を浮かべながらこのように回答しました。
「さっき説明したけど、入水管から酸素やエサを取り込もうとしてるんやけど、ここは海やなくてトレイの中やん。貝本体の付近だけではそれらをあまり取り込めないから、『どこかそれらを吸い込めるええとこないか?』とビローンと伸ばして探してるわけや」







