日本の春を象徴する植物といえば「桜」ですが、30年以上にわたり研究・保全に人生を捧げる人がいます。“桜博士”こと森林総合研究所の勝木俊雄さんに、桜に関するアレコレを聞きました。

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●桜は「バラ」の仲間
サクラ類はサクラ属に分類される種の総称で、さらにバラ科にまとめられるため、近縁の仲間とも言えるのだとか。
●実には毒がある?
桜の種類によっては、未熟の果実には青酸カリ系の毒を持つものもあるとか。ですが、通常は成熟すると毒は分解され、少量食べたとしても死に至ることはないとのこと。

●かつて、花見の主役は「梅」だった?
「お花見=桜」という認識は平安時代に生まれたものだといいます。奈良時代までは鑑賞用の花といえば中国から伝わった梅で、万葉集でも梅を詠んだ歌の方が圧倒的に多かったそう。日本独自の「国風文化」が花開く中で、野生の桜(ヤマザクラなど)が注目されはじめ、嵯峨天皇が桜を愛でる宴を開いたことが“桜の花見”のルーツと言われています。江戸時代になると幕府による植樹や園芸品種である「染井吉野」の登場などによって、庶民の娯楽として定着しました。

●日本の桜は危機的状況に直面している
勝木さんは、市街地の桜における“2つの危機”を警告しています。ひとつめは「植栽環境の変化」。山に自生しているものと異なり、市街地に植えられたものの多くは根を十分貼ることができないうえ、生育に適していない温度や降水量の環境下にあります。加えて気候変動により、将来的に状況はより厳しくなり衰弱する恐れも。すでに九州南部ではソメイヨシノに開花の異常が生じているそうで、今後植栽される桜の種類は変わっていくことが予想されているとのこと。
ふたつめは「管理不足」。厳しい環境に置かれている市街地の桜は適切な管理が必要とされます。特に近年は落枝や倒木による人的被害について、管理者責任が厳しく追及されるように。そのため危険木には相応の対処が必要です。しかしながら管理する費用や人員が不足していることが多いようで、伐採される事例が増えています。

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桜の開花が続々と発表されていますが、私たちが当たり前に見ている景色は数十年後には失われているかもしれません。日本の風物詩である花見を後世へ残していくためにも環境への配慮はもちろん、伐採問題に危機感を抱くことが大切なのかもしれません。
(取材・文=堀田将生)





