妙心寺の塔頭・麟祥院(同市右京区)の障壁画「雲龍図」(海北友雪筆)は、禅宗寺院の方丈の中でも重要な部屋を飾ってきた優品だ。麟祥院を開いた春日局は、海北友雪を徳川家光に推挙、友雪の画業の道筋をつけた。
院の住職は修理前から、障壁画を安心な温湿度環境と防犯体制が整った博物館に寄託することを決めていたという。そして修理完了後は、関係者の協力を得ながら、高精細スキャンデータを利用した複製襖を制作、元あった位置に設置した。


文化財修理は、制作当初の姿に戻す「復元」とは異なり、現存する部分を最大限に尊重するという原則がある。報恩寺(京都府舞鶴市)本堂の障壁画「群仙図」(江戸時代・1836年)は幕末の京都を代表する絵師・塩川文麒が仙人や童子を描いた秀作だが、かなり昔から複数の人物の目の部分がくり抜かれていた。高い位置にある人物の目は無事であるため、子どものいたずらの可能性があった。助成が決まった際、住職は目が黒く塗られて戻ってくるのではないかと期待したが、「現状を最大限尊重する」という原則によって、そのままとなった。だが下地を新調したことで、全体のゆがみが直り、すっきりとした画面に生まれ変わった。

竹嶋学芸員は、文化財修理をとりまく問題として「修理技術の継承はもちろん、修理で使う道具や素材をつくる人の継ぎ手が不足している。漆だと国産漆が手に入りにくくなっている。仏像修理で用いる特殊な彫刻刀など刃物類をつくることのできる鍛冶職人も急速に減り始めている」などを挙げた。さらに、「これまで住友財団にSOSが届き、修理に至った文化財の多くが、家や地域のアイデンティティーを示すものだった。裏を返せばアイデンティティーになりにくい文化財はどうなるのか。そこに抜けがあるかもしれない。今回の展覧会に登場したのは、幸運にも修理に結びついた一部の文化財だ」と話した。
◆特別展「文化財よ、永遠に2026―次代につなぐ技とひと」 住友財団文化財維持・修復事業助成の成果展示
会場 泉屋博古館(〒606-8431 京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町24)
会期 2026年4月4日(土)~6月28日(日)
Ⅰ期 4月4日(土)~5月6日(水)
Ⅱ期 5月9日(土)~5月31日(日)
Ⅲ期 6月2日(火)~6月28日(日)
休館日 月曜日(5月4日は開館)、4月24日(金)、5月7日(木)、5月8日(金)
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
入館料(税込) 一般1200円、学生800円、18歳以下無料
問い合わせ 泉屋博古館、電話075-771-6411
展覧会特設サイト https://sen-oku.or.jp/program/202604_newlifefortimelessa





