素朴さと洗練されたデザイン性を備えたチェコの絵本を通し、その魅力とチェコの児童書の歴史を振り返る特別展「チェコ絵本の作り方 -ボローニャ国際絵本展 受賞絵本から日・チェコ共作のコミックまで-」が、芦屋市立美術博物館(兵庫県芦屋市)で開催されている。2026年9月27日(日)まで。
チェコ共和国は、日本の北海道と同じくらいの広さで、四季がある。日本とのつながりも深く、日本はビールの原料となるホップを多く輸入している。歴史をみると政治が大きく揺れ動き、外国勢力の支配や侵略を受け、社会主義国だった時代もある。そのような厳しい時代も公用語であるチェコ語を守り続けた。大きな役割を果たしたのが絵本だったとされる。様々な芸術性の高い作品が生み出され、今も魅力的な絵本が発表されている。題材となっているのは、伝承やおとぎ話が多いが、オリジナルのストーリーもある。「創成期から現代の表現までの移り変わりを紹介する、まさにチェコ絵本史です」と同館の小林麻衣子学芸員は話す。

社会主義体制の頃は、規制が多く、自由な表現が難しい時代だった。その中で絵本は比較的表現がしやすく、携わる人が多かったという。1989年のビロード革命で社会主義体制が崩壊すると、出版業界も自由化され、baobab社をはじめとする多くの出版社ができた。表現も様々となり、リトグラフやコラージュも。会場には原画と制作過程の資料、その絵本などが展示されている。
人気の「ジス・イズ シリーズ」の1冊「ジス・イズ・プラハ」は、犬がプラハの街を案内するような本。だが、原画には犬は描かれていない。「実際の本との違いを見ていただければ」と小林学芸員。また、『フリドリーナとアントニーナと小さなミーナ』の原画は布に刺繍が施されている。「布の質感や糸の影など素材感や立体感が出るように印刷されています。その豊かな表現にも注目です」。さらに絵本によっては、凹凸が感じられるもの、ページによって紙質を変えているものなど五感に訴えるものや、蛍光色といった日本では使わないような色が使われるなど色使いの豊かさも感じることができる。
取り上げるテーマやタイトルもユニーク。例えば『にわとこ(エルダーベリー)の茂み』は、鳥とにわとこの種という2つの視点から描かれ、それぞれから読み進めていくと真ん中で出会う。人間の生活、そこから出るゴミ、そして環境問題と、自然の循環が描かれている。「日本の絵本は教育的な側面が強い印象がありますが、チェコの絵本の表現はより幅が広く、人間と生物や自然の関わりを描いている作品などもあります」と小林学芸員は解説する。
このほか、チェコでも活躍する3人の日本人作家の作品や、現代のチェココミックも展示する。チェコ絵本の父と呼ばれるヨゼフ・ラダがコミックも手掛けていたように、絵本とコミックは密接に結びついて発展してきた。日本とのつながりもあり、チェコの学生が、日本での滞在経験を元に、日本の伝統工芸や習慣、儀式など日常を描いた作品も紹介する。





