「拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極みであります 」
安倍晋三首相の辞任表明。神戸に住む拉致被害者の家族は驚きの表情を見せた。北朝鮮によって1983(昭和58)年、当時23歳で拉致された有本恵子さんの父・明弘さん(92)は28日夕方、神戸市長田区の自宅で安倍首相が辞意を表明する記者会見のテレビ中継を見守った。
「まさか、と思った。(拉致問題が)解決するまで続投してほしかったが、病気には勝てない。いち早く解決するには、安倍さんしかおらんと思っていたのに」と話した。
明弘さんはかねてから、拉致問題に積極的な姿勢を示していた安部首相を高く評価していた。恵子さんが還暦を迎えた2020年1月、ラジオ関西の取材に「北朝鮮は親子3代にわたって独裁国家を築き、沈黙を守ってきた国。安倍首相自身が金正恩委員長との直接対話を」と日朝会談による解決を望むコメントを残していた。
明弘さんの妻・嘉代子さんは2月3日に94歳で死去。安倍首相はその際、拉致問題は日本が主体的に解決すると強調し「条件を付けずに金正恩朝鮮労働党委員長と向き合う考えだ。あらゆるチャンスを逃すことなく、問題の解決に全力を尽くしていきたい」と述べた。
今年は明弘さんにとって、さまざまな別れがあった。6月、長年一緒に拉致問題の解決に向け闘った、横田めぐみさん(失踪当時13歳)の父で、拉致被害者家族会初代代表・ 横田滋さん(享年87)の死去に際しても「もうあとがない」と解決の糸口が見いだせない現状にいら立ちを見せていた。
後継の首相に対しては「安倍さんも、トランプ大統領との関係も含めて引き継いでほしい」と求めた。