特定抗争指定暴力団「六代目山口組」と「神戸山口組」。これら「2つの山口組」の抗争とされる事件の刑事裁判について、裁判員裁判とするかどうか、神戸地裁の判断が分かれている。
神戸市中央区にある神戸山口組の中核組織「山健組」近くの路上で、山健組傘下組織の組員2人が銃撃され死亡した事件から10日で1年を迎えた。これに先立つ2019年8月には、対立する六代目山口組の中核組織「弘道会」の拠点事務所で組員が銃撃された事件が起き、殺人未遂などの罪で「山健組」組長が起訴された。一連の抗争で神戸地検が起訴したのは4件の事件で5人にのぼる。
これら4件のうち、尼崎市の路上で2019年11月、神戸山口組元幹部が射殺され、対立する六代目山口組の元組員が殺人罪などで起訴された事件で、神戸地裁が裁判員裁判の対象から外す決定をした。一方、神戸市中央区の商店街で2019年4月に神戸山口組・直系組長が包丁で刺され、 六代目山口組系組員の男2人が殺人未遂罪などで起訴された事件では、別の裁判長が裁判員裁判の対象とする決定を出した。
これらの事件は検察側、弁護側(場合によっては被告自身も)、裁判所の3者協議「公判前整理手続き」が進んでいるが、この訴訟指揮については担当の部総括判事(いわゆる「裁判長」)に一任されている。
一連の抗争事件を踏まえて「2つの山口組」は特定抗争指定暴力団に指定された。神戸地検は、両組織が関わるとされる事件4件を「関係者が裁判員に危害を加え、公判に悪影響が出る恐れがある」として、神戸地裁に裁判員裁判の対象から除外するよう請求していた。
裁判員法では、裁判員の生命、身体、財産などに危害が加えられる恐れがある場合は、対象から除外し、裁判官の合議体で行うとの規定がある。尼崎市の事件は、担当する裁判長が 「裁判員法の規定に該当する」として除外したが、神戸市の事件は裁判員裁判とすることの理由が明かされておらず、 神戸地検は決定を不服として即時抗告している。