淡路島・洲本市で2015年に5人を刺殺したとして、殺人・銃刀法違反の罪に問われた男(46)について、最高裁・第三小法廷は25日までに、上告を棄却した(1月20日付)。死刑とした一審・神戸地裁の裁判員裁判判決を破棄し、心神耗弱状態だったとして一転して無期懲役を言い渡した二審・大阪高裁判決が確定する。
2009年の裁判員制度開始以降、一審の死刑を破棄し、二審判決で無期懲役となり確定するのは7件目。
裁判員裁判では、国民の感覚を反映した一審判決を二審も重視する流れはあるが、死刑判決に限れば事情が異なる傾向にある。弁護側は控訴審で「被告は妄想に支配されて犯行に及んだ」として、刑罰が科されない心神喪失による無罪を訴え上告したが、最高裁は今回の決定で上告理由に当たらないとした。大阪高検は上告しなかったため、最高裁が刑をより重くすることはできず、死刑の可能性はなくなっていた。
争点は、無期懲役を維持するか、心神喪失状態で無罪とするか(刑事責任能力の有無)だった。2017年3月の一審判決は、精神鑑定結果を基に、被告は向精神薬の乱用歴による精神疾患があったと認定。その上で「精神疾患は被告の意思決定と行動に大きな影響を与えていない」として完全責任能力があったとした。
二審は、死刑事件のため責任能力の判断に万全を期す必要があるとして改めて精神鑑定を実施。「被告は妄想性障害となっていて、犯行時、妄想が非常に活発だった」との鑑定結果を踏まえ、犯行を思いとどまる力が著しく減退する「心神耗弱」状態だったと指摘し、一転して無期懲役とした。刑法では被告が「心神耗弱」か、善悪が判断できない「心神喪失」の場合、刑を軽くすることを定めている。
一、二審判決によると、男は2015年3月9日午前、兵庫県洲本市の自宅近くの住宅2軒を襲い、当時59~84歳の男女5人をサバイバルナイフで刺殺した。