2007年に『聖職者』で小説推理新人賞を受賞し、『告白』『贖罪』『未来』などの作品を生み出してきた小説家・湊かなえさん。“イヤミスの女王”とも称され、多くのミステリー小説ファンに愛されている。そんな湊かなえさんが、放送部を舞台に、全国大会を目指す生徒たちの学園青春物語を描いた『ブロードキャスト』を発表。そして2021年には続編である『ドキュメント』がKADOKAWAから出版された。インタビュー後編では、湊かなえさんの執筆のスタイルなど、普段の生活について聞く。
◆“イヤミスの女王”が明かす、発想のカギ
――これまで数々のミステリー作品を生み出されていますが、物語の発想はどこからわいてくるんでしょうか?
あえて悪人を作ろう、とかそういったことを考えてはいないですね。人間誰にでも心に負の感情を持っていると思うので、特別な人を出すというよりも「こういう状況にいる人は、どんな負の感情を持つだろう?」と考えます。例えば、アナウンサーの方を主人公にするなら、「このお仕事をする方が抱く負の感情って何だろう?」「家庭環境によって生じる負の感情はある?」「最初は小さかった負の感情が膨らむとするなら、どんなきっかけがある?」「感情が爆発するとしたら、どういった環境・要因がある?」……ということを考えて話を作っているので、誰でもイヤミスの主人公になれます。
――作家さんによって執筆スタイルは様々ですが、湊さんはどのように執筆を進めていますか?
取材の量は少ないと思います。舞台が特別な場所ではなく、多くの人が通ってきた学校・家庭・地方都市の町だったりするので。そのなかで「どんなことが起きるだろう?」と想像を膨らませる方が多いですね。ただ、今作のように規定のある大会だったり、警察が捜査を進める手順だったり、決まりのあるものは取材します。(取材を)しすぎると今度は「書かなきゃもったいない!」と思ってしまって……(笑)。取材レポートみたいになるのは避けたいので、最低限の取材と事実確認、それから想像ですね。
――執筆する時間帯などは決まっていますか?
執筆は夜ですね、集中できるので。まだ子どもが小さかったときは、寝た後に書き始めて夜の10時、11時から午前3時、4時くらいまで書いていました。夜の方がグッと感情を煮詰めたり、深いところまで自分を持っていけますしね。ただ、夜中に書いたものは朝とか明るい場所、なるべく外に持っていって読み返すようにしています。「なんかちょっと重すぎるな」とか、「自己陶酔しすぎなんじゃないの?」とか、客観的な読み方をして昼に書き直しをしています。
――書き直し作業は行きつけの喫茶店や、外でしているんでしょうか?