兵庫県赤穂市発注の配水池整備工事でなどをめぐる贈収賄事件で、加重収賄の罪に問われた市の元担当課長(59・懲戒免職)らの初公判が12日、神戸地裁で開かれ、いずれも起訴状の内容を認めた。
起訴状によると、元課長は2020年6月に入札が行われた赤穂市の浄水場整備工事などをめぐり、岐阜県に本社を置く建設設備製造会社・大阪支店(大阪市淀川区)などに所属する営業担当の男(49)から現金218万円をを受け取った見返りに、この会社の製品(ステンレス製タンク)を納入できるよう、市内にある浄水場の工事の設計図面を同社製の規格に合わせて書き換えたとされる。この男を含む社員・役員ら3人も贈賄罪で起訴された。
検察側は冒頭陳述で「元課長は消費者金融から200万円を借りていたほか、妻にブランド品を買い与えるなど、生活費以外での浪費や高級外車への買い替えなどの出費もあり、返済に苦慮していた。こうした中、営業担当の男に賄賂を要求、受け取った現金で借金を返済した」と指摘した。
弁護人によると、この会社は配水池などで使用する「ステンレス製タンク」の製造・販売で国内トップシェアを占めるという。この日、 贈賄側の3人への被告人質問が行われた。 全国的に浄水場の老朽化が進み、整備工事の必要性が叫ばれる中、 営業統轄役員の男(62)は、なぜ賄賂を渡したのかという弁護側の問いに「確かにライバル社の上を行くほどの業績はあったが、それだけに会社からの厳しいノルマやプレッシャーがあった。折しも各自治体の災害復旧工事が優先され、浄水場整備工事の発注が延期されたので、売り上げの確保を急ぎたかった。部下である営業担当の男はエース級の営業マンだが、『仕事を取りたい』という気持ちを重んじ、(役員が)自腹で210万円を工面した」と述べた。また「お金を払ってでも設計画面を差し替えるように指示したのは誰か」と問われると「私です」と答えた。
そして裁判長が役員に「贈賄罪の意味がわかりますか」と尋ね、「公務員が金品で買われると、公平な社会が失われるのです」と諭す場面もあった。
検察側は贈賄側の3人にそれぞれ懲役1年を求刑、弁護側は執行猶予の付いた刑を求めて即日結審した。判決は6月28日。
なお、加重収賄罪に問われた元課長の審理は分離されることになった。赤穂市では2019年にも、市発注の橋梁修繕工事と下水道工事で贈収賄事件が発覚、職員2人が加重収賄などの疑いで逮捕、起訴され、いずれも有罪が確定した。さらに2002年、2007年にも職員が収賄や入札妨害容疑で逮捕された。元課長は5人目の逮捕者で、架空の工事を偽装し、市から約47万円をだまし取ったとする詐欺罪でも追起訴されている。