7月31日に任期満了を迎え、知事を退任する兵庫県の井戸敏三知事(75)の退任式が30日、兵庫県庁(神戸市中央区)で行われた。県民や、集まった1,000人の県職員らに感謝を述べ、花束を受け取ると笑顔を見せた。
旧自治省出身。副知事から2001年に故・貝原俊民前知事の後継者として県知事選に当選し、 県政史上最長5期20年にわたり県の舵を取った。1995年の阪神・淡路大震災で1兆3000億円もの県債を背負った兵庫県の「創造的復興」を引き継ぎ、被災者の生活再建支援やハード面の整備に注力。2008年度には行財政改革に着手し、18年度には収支均衡を達成した。
また、10年12月に発足した関西広域連合では連合長を5期10年にわたって務めた。中央集権や東京一極集中の打破に力を注いだ。退任セレモニーでは現在の連合長、仁坂吉伸・和歌山県知事から贈られた「東日本大震災(2011年)が起きた時の間髪を入れぬ我々知事市長の非常招集と、カウンターパート方式による主要被災3県への密着支援の提唱という強力なリーダーシップ、井戸さんという人がいなかったら、関西広域連合は生まれてもいない」というメッセージが読み上げられた。そして退任に伴う記者会見では「兵庫は変革と挑戦をし続ける県。課題に挑み続けてもらいたい」と、7月の兵庫県知事選に当選した斎藤元彦氏(43)にエールを送った。
退任式の後、通例ではそのまま県庁を去るが、新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、国から「まん延防止等重点措置」の実施区域として指定されることを受け、県の新型コロナウイルス対策本部会議を開催。本部長として出席し、対応を議論した。退任会見で「阪神大震災の復興から始まった私としては、こういう退任の迎え方もあるのかと思っている」と述べた。
「仕事一筋で50年以上やってきた」と振り返った井戸知事。最後の最後まで「仕事人間」として激動の一日を過ごした。今後の日常については、「暇になってしまう。はじめての生活をどう構築できるか不安だが、どうにかなるだろう。楽観主義者だから」と笑顔を見せた。