東京パラリンピックは13日間の大会期間を終え、5日、閉幕した。組織委員会の橋本聖子会長は一夜明けた6日、オリンピック・パラリンピックを終え、新型コロナウイルスによる1年延期を経て開催された大会について「パンデミック(世界的大流行)後、世界で初めてのグローバルイベントであるオリ・パラを開催し、しっかりとバトンをパリにつなげたことを誇りに思いたい」と東京都内での会見で総括した。
パラリンピックでの選手の活躍に触れ、ヨットレースへの思いを強くした視覚障がい者の女性がいる。2021年10月開催予定だった第21回全国障害者スポーツ大会「三重とこわか大会」(第76回国民体育大会「三重とこわか国体」と同時開催、通称「障がい者国体」)に向けて初めてのヨットレースにチャレンジしようとしていた大阪府在住の鏑木(かぶらぎ)佐和子さん。国体中止の受け止めとパラリンピック閉幕について聞いた。
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■予想外の国体中止、しかし新たな希望が
今年の春、新型コロナウイルス感染拡大のまっただ中でオリンピック・パラリンピックが開催されるのかどうか議論される中、私は、とこわか大会開催の有無について「オリンピック・パラリンピックが開催されるなら、きっと、三重とこわか大会も開催されるだろう」と思っていました。それなのに…、予想外の発表に大変驚きました。とは言え、中止が決まった以上、受け止めるより仕方がありません。大会をとても楽しみにしていただけに、大変残念です。
でも、希望はあります。私が出場を予定していたブラインドセーリング(視覚障がいのある選手が自力でヨットを操船するセーリング)の主催者の方から「(今後は)毎年8月に実施してきた三重でのハンザ(ヨット)の全国大会に、このブラインドセーリングを引き継いでゆきたい」という力強い言葉をいただいたのです。来年また、同じ形式のレースが出来るなら、新たな目標に向かって練習を続けていくのみです。
■勇気もらった「パラリンピック」
東京パラリンピック。私は、今までのどのパラリンピックよりも楽しみました。私は、パラリンピックに限らず、オリンピックでも、競技を終えた後の選手のインタビューを見るのが好きです。思い切り力を出し切った後の選手のすがすがしさ、喜びが私にまで伝わって、心に染み入るからです。特に、印象に残った選手は、パラリンピック初出場、最年少の14歳、運動機能障がい・競泳(100m・50m背泳ぎ)の山田美幸さん。2つの銀メダルを獲得されました。山田さんは、よく「競技中、楽しめた」とコメントしていました。素晴らしいです!
そして彼女の座右の銘は、「無欲は怠惰の基である」。この言葉、聞いた瞬間から私の心の中にスッと納まりました。そして、この言葉を選んだ理由を彼女は、次のように語りました。「やはり何事も真剣に取り組むと、『欲』が出てくると思うんです。もっと上を目指したいとか、メダルを取りたいとか。欲が出ることは悪いことではないと思い、自分の欲に素直に従って全力で取り組んでいきたい、という思いを込めました」と。「欲が出ることは悪いことではない」。その迷いのない言葉や態度が、同じくスポーツを志す者として私を優しく励ましてくれたような気がして、胸の中が暖かくなりました。ほかには、車椅子ラグビー、乗馬、視覚障がい選手の水泳などが興味深かったです。