9月9日は「重陽(ちょうよう)の節句」。別名「菊の節句」とも呼ばれ、桃の節句(3月3日)や端午の節句(5月5日)と同じく『 五節句』の一つ。 節句はもともと旧暦で親しまれた暦のため、重陽の節句も本来は旧暦9月9日に行われていたが、明治以降は新暦で行うようになった。
時間や月日を占う考え方として古くから根付いた「陰陽五行説」によれば、 奇数の月日を「陽」=天ととらえ、9月9日は数字で一番大きな「9」が重なる。つまり「重陽」とは、「陽」が重なり、天の力が最も強まることを意味するという。人々はかつて「天を祀ることによって、災いを忌避する」と考えていた。
旧暦9月9日頃は菊の咲く季節。薬効の高い菊を日常生活で使っていたことから、桃の節句同様、別名で「菊の節句」ともいわれる。またこの時期は栗の旬でもあり、「栗の節句」といった呼び方も。ただし新暦の9月9日は、まだ菊や栗が旬ではなく、手に入らないことも多い。現代では桃や端午の節句に比べ、 しだいに知名度が下がってゆく。
・・・・・・・・・
こうした中、失われつつある日本人の季節感を大切にしたいと、京都・嵐山の「車折神社(くるまざきじんじゃ 京都市右京区)」で9日、「重陽祭」が営まれた。 車折神社がある嵐山・嵯峨野近辺には東映や松竹の映画撮影所があり、大覚寺(旧嵯峨御所)などとともに映画やドラマのロケ地としても知られ、芸能の神を祀り、多くの芸能人が参拝する。
車折神社の重陽祭は1997(平成9)年、130年ぶりに再興した由緒ある神事。江戸時代の末期まで神仏習合の様式により盛大に行われ、神事とともに大般若経の転読も行われていたという。新型コロナウイルスの感染拡大による生活様式の変化や、地球温暖化による気候変動によって、季節の移り変わりを感じることなく過ごす私たちに「節句」の意義を伝えている。