すべてのシーンが美しい!含みを持たせたエンディングにも注目 映画『モロッコ、彼女たちの朝』レビュー | ラジトピ ラジオ関西トピックス

すべてのシーンが美しい!含みを持たせたエンディングにも注目 映画『モロッコ、彼女たちの朝』レビュー

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 モロッコの社会で女性たちが直面する困難と連帯を、やさしく温かく描いた映画『モロッコ、彼女たちの朝』が絶賛公開中です。今作を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。

©︎ Ali n' Productions – Les Films du Nouveau Monde – Artémis Productions

“モロッコ”と言えば、映画ファンにはマレーネ・ディートリッヒの『モロッコ』(1920年)、ハンフリー・ボガードとイングリット・バーグマンの『カサブランカ』(1942年)、ベルナルド・ベルトルッチ監督の『シェルタリング・スカイ』(1990年)などでおなじみの国だ。しかし、映画で描かれたエキゾティックな雰囲気はイメージのごく一部。そこに暮らす人たち、特に女性の生活や生き方についてはほとんど知らないと言って過言ではないことを、この映画を観て認識した。

 2019年、第72回カンヌ国際映画祭の“ある視点部門”に正式出品され、第28回フィラデルフィア映画祭の新人監督賞や、シカゴ国際映画祭、メルボルン国際映画祭などにもノミネートされた。また、2020年の第92回アカデミー賞国際長編映画部門には、モロッコ映画史上初めて女性監督作として出品された。モロッコの長編映画としては、おそらく日本初公開だ。

 マリヤム・トゥザニ監督はモロッコ生まれ。これまで短編映画の監督、脚本のほか、夫のナビール・アユーシュ監督の作品では俳優としても活躍してきた。今作が長編監督デビュー作。脚本も手掛けた。作品のもとになったのは、彼女がロンドン留学前に故郷で経験した出来事。家族で手助けをした未婚の妊婦との思い出だという。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

【ストーリー】
モロッコ最大の都市・カサブランカ。メディナ(旧市街)の路地を、サミア(ニスリン・エラディ)は臨月のお腹を抱えてさまよう。イスラムの国であるモロッコでは婚外交渉や中絶は違法で、罰せられることもあるためだ。彼女は、未婚の母になろうとしているだけで美容師の仕事も住む家も失った。職を求めて家々を訪ねるも取り合ってくれる人はおらず、一族の不名誉となることから故郷に帰ることもできない。途方に暮れ路上で夜を明かそうとしていたサミアに、通りの向かいで彼女の様子を見ていたアブラ(ルブナ・アザバル)が声を掛けてきた。一夜の宿を貸すという。サミアはアブラの家でしばし時を過ごすことになった。

 アブラは、パン屋を営みながら娘のワルダ(ドゥア・ベルハウダ)と暮らしていた。翌朝出ていこうとするサミアに、アブラはもう少しいてもいいと伝える。お礼にと、サミアは“ルジザ”を作ることにした。“ルジザ”とは、細く伸ばした生地を手に巻き付けて作るモロッコ伝統の紐状パンケーキ。ワルダの大好物でもあり、店頭に並べると瞬く間に売り切れる人気商品となった。

 やがて少しずつサミアに心を開いていくアブラ。地味な服に身を包み、ニコリともしないのはなぜなのか? 夫の死によって心を閉ざし、長らく喪失感に苦しんでいると語った。その名を娘につけたほどお気に入りの歌手ワルダ・アル・ジャザイリアのカセットテープは、夫との楽しかった思い出につながるからと封印。彼女に心を寄せる粉の配達人・スリマニ(アジズ・ハッタブ)のアプローチも受け入れない。家父長制社会にあって、夫の他界は後ろ盾をなくすこと。アブラは後ろ指をさされないよう地味な服を選び、楽しみから遠ざかって暮らすなかで自らを強く律していたのだった。一方サミアは、日々お腹の中で育っていく赤ん坊に愛おしさを覚えながらも母性を拒み、子どものためにも出産後すぐ養子に出そうと考えていた。

 サミアはいくつものタブーを破り、感情表現もストレート。したたかに生きようとする彼女の姿に、アブラはいつしか、自分も人生をもっと楽しんでもよいのではないかと感じ始めていた……。


『モロッコ、彼女たちの朝』
監督・脚本:マリヤム・トゥザニ(長編初監督)
出演:ルブナ・アザバル『灼熱の魂』『テルアビブ・オン・ファイア』
   ニスリン・エラディ
製作・共同脚本:ナビール・アユーシュ『アリ・ザウア』
2019年/モロッコ、フランス、ベルギー/アラビア語/101分/1.85ビスタ/カラー/5.1ch/英題:ADAM/日本語字幕:原田りえ
提供:ニューセレクト、ロングライド
配給:ロングライド
【公式HP】

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ばんばひろふみ!ラジオ・DE・しょー! (2) | ラジオ関西 | 2021/09/22/水 11:00-12:00

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