2021年9月のある日、神戸ワイナリーにおよそ20人が集まった。目的は「ブドウの収穫」。ブドウといっても食べるブドウではなく、高級赤ワイン品種の「カベルネソーヴィニヨン」。集まったのは「KOBEブラッシュワインプロジェクト」のサポーターたちだ。
ブラッシュワインとは、「赤ワイン用のブドウでつくった白ワイン」で、ほんのり色のついたワインを意味する。「KOBEブラッシュワインプロジェクト」は、神戸で育てたブドウを使用し、神戸でブラッシュワインを作ろういうもので、サポーターはただ出来上がったワインを楽しむだけでなく、ぶどう畑での作業や収穫を体験するなどワイン完成までのストーリーに参加している。
この日は、いよいよブドウの収穫作業を行う。カベルネソーヴィニヨンは「晩熟」の品種で、台風などの影響を受けやすい。今年は8月中旬の長雨と日照不足の影響を受けたが「まずまずの出来」という。サポーターたちはひと房ひと房、「傷んでいるところ」や「緑の粒」を丁寧に取り除いて収穫していく。いいワインに仕上げるには重要な作業だ。「手摘みでしかも傷んでいるところは取り除く」という収穫の仕方は、海外の高級ワインと同じ方法という。
余談だが、海外の「お求めやすい価格」のワインは、ブドウの収穫を機械で行なう。いいブドウもそうでないブドウも選別せずに収穫するので、味も落ちる。一方、フランスなどの高級ワインは手摘みでブドウを収穫する。例えばシャンパーニュは、手摘みでないと「シャンパーニュ」という名をつけられないほど厳しい。
この日参加したサポーターに共通するのは、「ワインが好きで、つくってみたいという思いがあった」ということ。はさみを動かしながら「楽しくてしかたない」と口を揃えた。
「これで何本くらいのワインができるんですか」
「醸造はどんな風にするんですか」
「ワインはいつ頃できるんですか」