『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が、いよいよ公開となりました。ダニエル・クレイグが5回目にして自身最後となるジェームズ・ボンドを演じ、『ボヘミアン・ラプソディ』でアカデミー賞を獲得したラミ・マレックが悪役として登場することも話題です。今作を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。
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待ちに待った「007」シリーズの25作目。コロナ禍による3回の延期を経て、10月1日にやっと公開された! 国内の週末興行ランキングでは、もちろん堂々の第1位を記録。土日の2日間で28万人、初日の金曜日も含めると実に42万人が劇場に足を運んだそう。
主演のダニエル・クレイグは6代目のジェームズ・ボンドだ。『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)から今作まで、15年間にわたり5本の作品でボンドを演じ続けてきた。そして今作が、彼にとって最後の007となる。
誰が演じたボンドがお気に入りかは、映画好きの間でも盛り上がる話題だ。初代のショーン・コネリーから、ジョージ・レーゼンビー、ロジャー・ムーア、ティモシー・ダルトン、ピアース・ブロスナン、そしてダニエル・クレイグまで。歴代6人のボンドの中で“推し”は人それぞれだろうが、ショーン・コネリーは別格として、1番の好みに挙げる人が多いのがダニエルだ。
しかし、彼がボンド役に選ばれたときには「金髪で青い目のボンドなんて……」と大ブーイングが起きた。覚えている人も多いかと思う。それはもうひどい罵詈雑言が飛び交っていた。当時のことは、某サブスク(サブスクリプション)情報メディアで公開されているドキュメンタリー映画『ジェームズ・ボンドとして』(2021年)に詳しく描かれている。
そんな彼が、いかにして多くのファンの心をつかむようになってきたか……というより、『007/カジノ・ロワイヤル』でいきなりファン納得のボンドを演じることができたのか。それは、彼の演技力や大変な努力があったのはもちろんのこと、時代にマッチした“生身のボンド”を現出させる作品づくりも大きく影響したのではないだろうか。