神戸市北区で2017年7月、祖父母や近隣住民ら5人を殺傷したとして殺人や殺人未遂などの罪に問われた無職の男性(30)の裁判員裁判の判決で神戸地裁は4日、「被告は統合失調症の圧倒的な影響下で心神喪失状態だった疑いがある」として無罪を言い渡した。求刑は無期懲役だった。
複数人が殺傷された重大事件で、被告の刑事責任能力を否定して無罪とするのは異例とみられる。
■被告(男性)を無罪とした4日の神戸地裁判決、ポイントは次の通り。
▽被告は統合失調症の圧倒的な影響下で心神喪失状態だった疑いがある。
▽被告が幻声(幻聴)や妄想の圧倒的影響を受けたとする最初の精神鑑定結果を基に判断すべき(※男性に対しては3回、鑑定が行われた。最初の鑑定の面会は11回に及んだ)。
▽被告は妄想を信じ、正常な精神作用が機能していない状態で犯行に及んだ。
殺害された近隣に住む女性(当時79)の遺族は
「判決を聞き、ただただ絶望しています。何の罪もない3人が無法に命を奪われたのに、犯人は法律で命を守られたことには到底納得ができません。私たちと同じような思いをする人がいなくなるよう、責任能力という制度と運用を、見直すきっかけにしてほしいです」とコメントした。
また、重傷を負った別の女性(69)は
「判決を聞いて、正直申し上げて、愕然(がくぜん)としました。これが裁判員裁判か、こんなことが許されるのかと落胆しています。ようやく生活の平穏を取り戻しつつあったのに、私が生きている間は戻ってこないだろうと安心していたのに。
本日(4日)の判決と釈放によって、4年間かけてようやく取り戻しつつあった安心と生活が一気に崩れ去りました。今後が不安でなりません。検察には控訴を検討していただきたいです。被告人(男性)には、絶対に何があっても、(私の)近くには来ないでほしいです」と怒りを隠せない。