障害者らが不妊手術を強いられた旧優生保護法(1948~1996年)の規定を憲法違反とし、一連の訴訟で初めて国に損害賠償を命じた大阪高裁判決を不服として、国が7日、最高裁に上告した。各地の訴訟も最高裁まで争われる可能性があり、被害救済が大幅に遅れる可能性がある。3月11日には東京高裁で控訴審判決が言い渡される。
一連の訴訟では、仙台、大阪、東京、神戸など全国の地裁判決6件のうち4件で旧法の違憲性を認定した一方、国に対する賠償請求権が消滅する20年の「除斥期間」を理由に、6件すべてで賠償請求を棄却。2月の大阪高裁判決は最初の控訴審判断で、除斥期間を適用せず、初めて請求を認め、聴覚障害のある大阪府の70~80代夫婦と近畿在住で知的障害のある70代女性に対し計2750万円を支払うよう国に命じた。
国の上告を受け、全国弁護団は「国は、この期に及んで更なる過ちを重ねるようであり遺憾の極み。最高裁は、一刻も早く司法府としての最終判断を下すことを求め、優生手術の被害者の救済を一向に進めようとしない国の退路を断つことを要請する」との声明を新たに出した。
一方、上告について厚生労働省は7日、「除斥期間の解釈・適用に関し、法律上の重大な問題を含むため、最高裁の判断を仰ぐ」とコメントした。
大阪訴訟の原告側は8日、大阪市内で記者会見し、上告を取り下げて被害者らの早期救済に向けた協議の場を設けるよう国に求めた。原告ら「子どもがほしかった気持ちは変わらず、怒りが消えない」、「国は私たちへの差別を本当に理解しているのか。人権を長年踏みにじってきたことに怒りを覚える」と憤った。
大阪高裁は国に対する損害賠償請求権が20年で消滅する「除斥期間」を当てはめると「著しく正義、公平に反する」として適用しなかったのに対し、国は「法律の解釈に重大な問題がある」と上告した。会見に同席した原告弁護団の辻川圭乃(たまの)弁護士は、過去の判例に照らしても大阪高裁の判断は妥当だと反論し、国が受け入れないのは「信じられない」と非難した。
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全国の被害弁護団らはこれに先立つ4日、参院議員会館で緊急集会を開き、超党派議員連盟に対し、国が上告断念するよう働き掛けることなどを求める要請書を提出している。また、国への上告断念を求める1万4377人分の署名が集まった。