明治時代の「鉄道唱歌」にはじまり長い歴史を持つ「鉄道ソング」。今回はそんな中から1970年代から1980年代にかけて生まれ、日本のポップスシーンに大きな影響を与えた名曲の数々を、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が一挙紹介します。
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【中将タカノリ(以下「中将」)】 菜津美ちゃんがボーカルをやってる半熟BLOODは“鉄道系音楽グループ"なのに、なんでこれまでこのテーマを扱っていなかったか不思議です。
日本には明治時代の「鉄道唱歌」に始まり、時代ごとに数々の鉄道ソングがあるんですが、一度に全部紹介するのは無理があるので、今回は1970年代から1980年代にかけてのものを紹介したいと思います。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 やったー! 鉄道ソングに詳しくなりたいです!
【中将】 鉄道ソングって情景がうかびやすいし、独特のロマンや切なさにあふれていて名曲が多いんですよね。若者が夢を追いかけて地方から東京に出ていく時代ならではの……たとえばチューリップの「心の旅」(1973)なんてその代表格だと思います。
【橋本】 知ってるー! 歌えます! 「あーだから今夜だけは 君を抱いていたい」……タイトルは知らなかったんですが、この曲が「心の旅」なんですね。
【中将】 チューリップの3枚目のシングルなんですが、実は当時のチューリップはレコードが売れず、これでダメならもう福岡に帰るしかないというところまで追い込まれていたそうです。そこで上京した時の心境を思い出しつつ一曲入魂で書かれたのがこの「心の旅」。同じく夜汽車をテーマに歌って少し前にヒットしていた曲、はしだのりひことクライマックスの「花嫁」(1971)なんかも意識したそうですね。
【橋本】 チューリップは財津和夫さんが歌ってるバンドなのかな? というイメージなんですが、なんだか声も歌い方も違いませんか?