東京ドーム◯◯個分、25メートルプール◯◯杯分、2トントラック◯◯台分……などなど、本当にピンとくるかどうかは別にして、何かの大きさや量の多さを例えるのに「××が◯◯個分」という表現はよく見かけますよね。食品に含まれる栄養素でも「レモン◯◯個分のビタミンC」はよく目にする例かと思いますが、他にも、例えばコンビニやスーパー内を見渡せば「プルーン◯◯個分の鉄分」や「しじみ◯◯個分のオルニチン」など、栄養素を食品の「個数」でアピールする製品はたくさん見つけることができます。
その中でも「食物繊維」の多さを例えるのに、「レタス◯◯個分」と表記されているのを見たことがある人は多いのではないのでしょうか? しかし、実はレタスはそこまで食物繊維が多い野菜ではないそうなのです。管理栄養士の衞藤敬子さんによると、レタス100グラムあたりに含まれる食物繊維の量は1.7グラム。同じ100グラムあたりの数値では、ごぼう10.4グラム、えのき4.8グラム、アボカド4.5グラムなど、レタスよりはるかに食物繊維を多く含む野菜は他にもあり、レタスがそこまで多いわけではないこともわかります。
「血糖値の上昇を緩やかにする」「脂質の吸収を抑えて、生活習慣病予防やダイエットサポートに働く」「腸内環境を整える」など、健康維持や美容にうれしい働きのある食物繊維。現代の人たちには不足しがちな栄養素だそうですが、1日の摂取目標量は、男性18〜64歳で21グラム以上、女性18〜64歳で18グラム以上とのこと。例えば男性の場合、レタス約4〜5個分で1日分の食物繊維を確保することができる計算となりますが、1日で食べるのは現実的ではありませんね。ちなみにごぼうだと、約1.5〜2本で目標量の達成が可能とのこと。
ではなぜ「レタス◯◯個分の食物繊維」という宣伝文句を各メーカーが多用しているのでしょうか?
実際に、同様の宣伝文句で製品を販売している某メーカーによると「レタスが食物繊維の多い野菜ではないのはもちろん知っています」とのことで、「レタス」を使用する理由については「レタスが一番わかりやすいから」だそうです。メーカーによると、消費者にとって近い存在で、サラダなどで最もよく食べられている野菜がレタスであり、「例えば、ゴボウは食物繊維が多いが、ゴボウ◯◯本では想像がしにくいですよね」と説明します。「あえて食物繊維の少ないレタスで例えることで、食物繊維の多さを強調したいからでは」という質問には「そういった意図は本当にありません」と強く否定しました。
食物繊維は多くないというレタスですが、決して栄養がないわけではありません。管理栄養士の衞藤さんによると、レタスは「カリウム」「β-カロテン」「ビタミンK」「葉酸」を多く含んでいます。カリウムはカラダのむくみ対策や高血圧予防に、β-カロテンはカラダの老化防止に、そしてビタミンKは健康な骨の形成に、さらに葉酸は貧血予防に……など、さまざま役立つ働きが期待できるそうです。
春はみずみずしいレタスが食べられる季節。食物繊維が少なくたって、補って余りある魅力がいっぱいのレタスを、ぜひ楽しんでください。
(※数値は日本食品標準成分表2020年版(八訂)差引き法による利用可能炭水化物引用)
◆衞藤敬子(えとう・けいこ) フリーランス管理栄養士
大手ダイエットアプリの管理栄養士として9年間従事。ダイエットやビジネスパーソン、プロ選手など延べ1,300人以上の栄養サポート実績あり。独立後は「女性に自信と実力発揮できる体を実現してほしい」という想いから「食で可能性を引き出す」ことをモットーに、個人サポートやプログラムなどで栄養を伝える活動をしている。