入院患者を虐待したとして元看護師ら6人が有罪判決を受けた神戸市西区の精神科病院について、弁護士や医療関係者による第三者委員会が2日、神戸市内で会見を開き、調査報告書を公表した。委員会は医療関係者や弁護士ら8人。2021年9月に立ち上げ、8回にわたり開かれた。報告書は 235ページに及ぶ。
2020年に開かれた刑事裁判の判決によると、この病院では、主犯格とされ、暴行や準強制わいせつ、監禁罪に問われた元看護助手の男(2020年に有罪確定)ら6人が、2018年10月以降、高齢の男性患者を病院内のイレのいすに座らせ水をかけるなどしたほか、病室で別の男性患者を床に寝かせ、落下防止柵が付いたベッドを逆さに覆いかぶせて閉じ込めるなど10件の虐待をしたとされる。
6人は被告人質問で「上司や同僚が虐待を繰り返しており、患者を雑に扱うことがまかり通っていた」などと述べ、常態化する患者への虐待の実態が浮き彫りになった。
この病院では、さらに2021年にも看護師による患者への暴行が発覚、兵庫県警が書類送検している。
第三者委は、看護師との面談を重ね、一部は意図的に暴力していた者がいたことを把握した。これらを総合的にみて病院側(前体制)による「患者の人権軽視」が背景にあるとした。このほか、▼経費節減のために看護師が外部で研修を受ける機会がなく、▼ほかの精神科病院では標準となっている、現在の精神科看護の水準についての理解が不十分だった、という点を挙げ、「手間をかけずに効率的に済ませることを優先し、患者の人権や個人としての尊厳に対する配慮が後退した」と指摘した。
さらに病院内に危機管理委員会を設置する代わりに、第三者委の設置には応じず、病院の実態を変えることなく病院名を変更して乗り切ろうとしたことなども指摘した。
このほか監督、指導する立場の神戸市についても、精神保健福祉法に基づき病院に対する実地指導を行い、「隔離や拘束と言った行動制限が継続されている診療録への記載について、理由や精神症状について具体的に記載し、行動制限の最小化に努めること」と指導し、病院側は「改善した」と報告したものの、実際は改善されないままで、神戸市はその後、漫然と同様の指導を繰り返すだけで、段階的に指導することはなかったなどとしている。