北海道斜里町の知床半島沖で26人が乗った観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が行方不明となった事故で、死亡が確認された14人のうち、4月29日に身元が判明した兵庫県小野市の竹川好信さん(66)、生子(せいこ)さん(年齢確認中)夫妻は、5月1日に身元が判明した東京都北区の次男・有哉(ゆうや)さん(33) とともに乗船し、犠牲となった。
夫妻の30代の長男(兵庫県在住)が2日、代表取材に応じ、「まずは犠牲者全員が見つかってほしい。そして、運航会社は事実をきちんと説明してほしい」と訴えた。
長男は事故翌日の4月24日未明に、北海道警から電話で観光船の乗船名簿に家族の名前があると知らされ、ショックで数日間は眠れず、食事も満足に取れなかったという。
長男は、父親・好信さんが現地で借りていたレンタカーの中にあったジャケットを着て、運航会社・知床遊覧船の説明会にも臨んだ。「父と一緒に(話を)聞いて、事故の真実を明らかにしたかったから」というのが理由だった。好信さんは定年退職後、生子さんとともに養蜂業に携わり、軌道に乗ってきたところだった。そして、環境に対する気候変動の影響などの研究を続けていた弟の有哉さんについて「まじめで、寡黙で、こつこつ仕事をするタイプ」と話した。
長男は説明会での桂田精一社長の態度に不信感を覚えた。目の前で土下座する姿を見たが「何かを隠しているのでは」。そんな思いがよぎった。そして納得がいかない乗船者の家族らの求めに応じた桂田社長が、何度も説明するものの、「(この人は)何もわかっていない、何も知らない人なんだ」と悟ったという。
長男は説明会を振り返り、桂田社長は「KAZUⅠ(カズワン)」が遭難した4月23日、当日だけ運行管理基準に反し、ふだんは基準を守っていたような説明だった」と話した。「自分には過ちがなかったような口ぶりで、誠実さは全くない。直接、社長から個別の謝罪も今だにない。結局、会見は形だけだったのでは」と憤った。
ほかの遺族とも説明会で顔を合わせ、話をするうち「当然のことだが、皆さん家族への愛にあふれている。自分の家族のことではないのに、涙があふれてきた」と振り返る。