日本で「お茶」というと日本茶を思い浮かべる人も多いだろう。毎日飲む人もいるほど生活に根付いているお茶。おいしいお茶を飲んでいると、日本で暮らしていてよかったと感じることもあるが、淹れ方に気を付けると味が大きく変わるという。そこで、「神戸チャイハーネ」(神戸・六甲アイランド)のオーナーで、日本茶インストラクター・日本茶審査技術5段の資格を持つ植木佑平さんに、おいしい日本茶の淹れ方や欠かせないポイントを聞いた。
これまでに数百種類のお茶を飲んできたという植木さん。「たくさんに聞こえますが、案外出会えるものですよ。1つのお茶だけ作る茶農家はありません。だいたい10~20種類くらいを扱っていて、茶農家さんによっては50種類ほど作るところもあります。そういった茶農家さんと数珠つなぎにご縁を重ねていくうちに、自ずとお茶の見識が深まっていくようになりました」
そんな植木さんが特におすすめするのは、兵庫県神崎郡神河町で300年の歴史を持つという完全無農薬煎茶「仙霊茶」。“完全無農薬”は、近隣の田畑で農薬を使っていたら名乗ることができないほどシビアな基準によるものだそう。
植木さんは、「肥料も使っておらず、体に染み込むような感覚にとらわれるお茶です。飲んだ瞬間、森林浴をしているような気分になるほど、“山の香り”を感じることができます」と、他にはない仙霊茶の魅力を語る。
よりおいしく飲むためには「香りは温度があがればあがるほど強くなるので、仙霊茶の場合、淹れる際は80℃後半のお湯を使って下さい。30、40秒ほど蒸らすのがベストです」(植木さん)
植木さんほどの経験を積むと、待ち時間は、茶葉の大きさを見ながら秒数は微調整するそう。また、蒸らす際もただ待つわけではなく、今、茶葉がどのような状態になっているのかを想像しているという。
さらに、植木さんは急須から注ぐときのポイントとして、「くるくると回さない」という点を挙げる。渦巻きを描くように回すとえぐみが出てしまうため、静かに待つのがいいそうだ。
さらに忘れてはいけないのは、「最後の一滴に旨みが詰まっている」ということ。植木さんは、淹れる際は流れるような手さばきで注ぎ、最後の一滴が落ちるのをしっかりと待っていた。