私立・甲南小学校(神戸市東灘区)に通っていた男子児童が、いじめが原因で転校せざるを得なくなったとして、同級生2人とその両親、学校側に計1760万円の損害賠償を求めた裁判で、神戸地裁は25日、加害者側に賠償を命じたが、学校側の責任は認めなかった。
訴えによると、男子児童は低学年だった2016年~2017年、人目のつかない場所で、 繰り返し同級生から腹部やほおを殴られたり、「菌」などと言われたりするいじめを受け、 精神不安定な状態で自宅へ引きこもるようになり、不登校になった。
こうしたことから飛び降り自殺を図ろうとするなど精神的に追い込まれ、心療内科で解離性障害や抗うつ症と診断され、2018年に転校したという。 現在も治療を継続している。
原告は同級生2人の行為が執拗で陰湿だったとし、それぞれの両親は監督する義務を怠ったと主張していた。 また学校側に対し、「いじめ防止対策推進法(2013年公布)」に基づき、被害を受けた男子児童を適切かつ十分に保護すべき安全配慮義務があったにもかかわらず、適切な対策を怠ったとしたいた。
そして、本来楽しいはずの小学校に通い友達と交流することもできず、自宅での引きこもりと長期間の不登校を余儀なくされた。そのため親子とも社会的に疎外される不安に悩まされ、また転校による学習面での遅れ、進学先など将来の希望に満ちた将来のプランを大きく狂わされたと話していた。
判決で神戸地裁は、男子児童の解離性障害の症状が、加害者の接触機会がなくなって2か月後に出現したことなどを挙げ、加害者とされる同級生に対しては、「いじめが男子児童の精神障害発症のひとつの契機となったことは否定しえないが、直接の原因とは認め難い」として計55万円の賠償を命じた。
一方、学校側に対しては「いじめに対する対処は、担任教諭のみならず校長以下、学年に関わる教員全員で情報共有し、防止対策を協議していた。そのほか学校内でのアンケート調査も行っていた」などとして、責任を問わなかった。
判決を受け、男子児童の父親は、多数の同級生が目撃しており、いじめが存在したことが明白だったとしたうえで「私立の学校は公の機関(教育委員会など)の手が届かないところがあると思います。児童の安全を確保すべき学校側の責任が認められなかったことは非常に残念です。いまだに学校に通うことができない子どもの心情を思うと、怒りしかありません」とコメントした。