少子高齢化や人口減少が進む日本では、様々な問題を抱えていますがそのひとつに「空き家問題」があります。総務省の住宅・土地統計調査によると、賃貸用住宅における空き家は432万7千戸あり(平成30年時点)、1973年の調査開始以降、年々増え続けています。
空き家は、放置されると崩れて周囲に危害が及んだり、ゴミの不法投棄や放火による火災が発生したりと、さまざまな問題に波及する原因ともなり、特に過疎化が進む地方部では大きな問題となっています。そこで、深刻化する空き家問題について、兵庫県養父市で空き家対策委員としても活動する生駒法律事務所の野崎佑也弁護士に聞きました。
--豊岡では空き家問題が他の地域に比べ多いそうですが、どのような問題があるのでしょうか。
【野崎弁護士】 空き家問題で最も苦情が多いのは、「草木の繁茂」です。空き家の庭の草木が、道路や隣の家にまで伸びてきたり、ツタが這ってきたり……特に夏場になると多い相談です。この場合、道がたとえ市の土地だったとしても勝手に切ることができないのです。
また他にも、人の目が行き届いていない空き家は、不審者の侵入を容易にするため、泥棒が住み着いたり、放火による火災の原因になったりすることがありますし、適切な維持・管理がされないまま長期間放置された空き家は、建物の老朽化を加速させ、地震、台風、積雪などによって倒壊する危険性も高まります。
--そのようなトラブルがあった場合、所有者はどのような責任を負うのでしょうか。
【野崎弁護士】 例えば、空き家が倒壊した際に、建物の建材などが近隣者や通行人に衝突し、怪我を負わせてしまった場合、所有者には被害者に対する損害賠償義務が発生する可能性があります。
持ち主が亡くなられている場合も多く、所有者の所在の把握が難しいケースもあります。その場合は相続人を探して、相続人に対応してもらうことになりますので、弁護士として所有権登記名義人や、その相続人の探索・所在の確認を行うこともあります。
--適切な維持や管理ができていない所有者は多いのでしょうか。
【野崎弁護士】 空き家となる原因として多いのは、地方に住んでいる両親が亡くなり、子どもが相続したものの、現在は都会に出て生活しているため住むことができないケース。土地に価値がある場合は売ることもできるのですが、土地にほとんど価値がない場合は、売るとなってもなかなか買い取り手が見つからないことが多いです。
さらに、取り壊すと費用がかかる上に税金もかかるのでそのまま放置してしまい、トラブルに発展するということが多くあります。手放したくても手放せないということもあるのですが、家は年月とともに老朽化しますので、放置しておいて良いことはありません。
また、2015年に空き家対策特別措置法が施行されたことにより、市区町村は管理のできていない所有者に助言や勧告ができるよう制度が変わり、改善命令に従わない場合は、建物を撤去し、費用を持ち主に請求することもできるようになりました。“特定空家”に指定された場合には、空き家に対して、勧告に留まらず命令として指導が行われ、状況によっては過料や行政代執行が行われる場合もあります。
--空き家を放置しないためにどうすればよいでしょうか。