「デュエットソング」といえば、スナックでおじさんとママがディープな演歌を歌う光景を思い浮かべる人が多いんじゃないでしょうか?
しかし、昭和には若者向けのポップなデュエットソングもたくさん。今回は1970年代から1980年代にかけて多数登場した「意外にポップなデュエットソングたち」について、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 「デュエット」と言えば、菜津美ちゃんはどんな曲を思い浮かべますか?
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 全然わからないジャンルですね……リアルタイムで男女で歌ってる人となると、HYさんくらいしか……。たまにスナックなどで「これ歌える?」と聞かれても、全然わからないんですよ。
【中将】 やっぱり世代的に触れる機会がなかったんでしょうね。昔は会社などでも宴会で女の子が上司と無理やりデュエットを歌わされるみたいな文化があったそうですが。
【橋本】 無理な感じですがそんなイメージはありますね。無理やり肩を抱かれて演歌を歌わされるみたいな。
【中将】 そういうイメージがあって廃れちゃった部分はあると思うんですが、昭和にはポップなデュエット曲もたくさんありました。今回はそんなポップなデュエット曲を紹介していきたいと思います。まずは、郷ひろみさんと樹木希林さんが歌った「お化けのロック」(1977)。
【橋本】 これはイメージ変わりますね! めちゃポップ!
【中将】 これは郷さん、希林さんたちが出演するドラマ『ムー』(TBS)の挿入歌として制作された曲です。『ムー』は足袋屋さんを営む家族を舞台にしたコミカルなホームドラマで、郷さんは次男・拓郎という役どころ。樹木さんが演じるお手伝いの金田(かねた)さんと毎回、店の地下室でこの曲を歌い踊りました。曲調はシンプルなロックンロールなんだけど、歌詞が面白いし、なによりお二人の声がポップでいい感じですよね。
【橋本】 ドラマから火が付いた曲なんですね。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBSテレビ)から恋ダンスが流行ったみたいな感じでしょうか。
【中将】 まさにそんな感じです。レコードはオリコン・ウイークリーランキング2位、年間ランキング29位の大ヒットになり、お二人は翌年にもドラマ『ムー一族』(TBS)挿入歌として「林檎殺人事件」をヒットさせています。
【中将】 次にご紹介するデュエット曲も大ヒットです。平尾昌晃さん、畑中葉子さんの「カナダからの手紙」(1978年)。
【橋本】 これは「お化けのロック」と比べると、かなり歌謡曲タッチですね。デュエット曲って、どういういきさつで「二人で歌おう」となるのか興味深いんですが、このお二人はどうして一緒に歌うことになったんですか?
【中将】 当時の平尾昌晃さんはアイドルから演歌・歌謡曲まであらゆるジャンルでヒットを連発する人気作曲家でした。主宰する音楽学校には後の音楽シーンを担う数々の歌手志望者が入学したんですが、畑中さんもその1人で、バツグンの歌唱力が認められて売り出し戦略の一環でデュエット曲でデビューすることになったんです。いわば師匠と弟子コンビですね。