今回のテーマは吉田拓郎さんの芸能界引退。「フォークの神様」「フォークのプリンス」などと称され1970年代フォークブームの第一人者として活躍した吉田拓郎さんの功績と名曲の数々について、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 吉田拓郎さんが7月21日放送の『LOVE LOVE あいしてる 最終回・吉田拓郎卒業SP』(フジテレビ)をもってテレビ出演終了、ラジオ番組『吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLD』(ニッポン放送)も12月に終了し、芸能界を引退することを発表しました。一つの時代が終わってしまうんだな……と寂しい気持ちになりますね。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 もう76歳になられるんですね。ご本人は全然老けたイメージがないのですが、一般の同じ年代の人のことを考えると音楽活動を続けることは大変なんだろうなと想像します。
【中将】 何度かご病気をされているようなので、体力的にもおつらいでしょうね。
ちょっと暗い出だしになってしまいましたが、今回は拓郎さんが日本の音楽にどんな影響を与えた方なのか、その功績を紹介していきたいと思います。
【橋本】 拓郎さんと言えばフォークのイメージですが、どんな背景を持った方なのでしょうか?
【中将】 日本では1960年代にアメリカ音楽の影響でフォークが流行します。1960年代後半になると安保闘争や学生運動、反戦運動の影響で、政治的な主義主張をする楽曲が主流になりました。拓郎さんもそういうムーブメントの中から台頭してきたんだけど、他の人と違ったのは政治とかじゃなくて個人的な恋愛や人生観について歌ったことです。音楽的にも単なる弾き語りだけじゃなくバンドサウンドにこだわり、フォークをポップスに昇華する役割を果たしました。そんな拓郎さんのデビュー曲は1970年の「イメージの詩」。
【橋本】 政治的ではないけど歌詞に強いメッセージ性を感じますね! 淡々とした構成なのに強烈です。
【中将】 字余りになるくらい歌詞を詰め込んだこのスタイルは、当時としても強烈だったみたいですね。それに歌詞がいちいちカッコいいんですよ。「古い船をいま 動かせるのは 古い水夫じゃないだろう」とか……。
【橋本】 カッコいい……名ゼリフですね!