神戸の風情あふれる元町商店街に店を構える「メゾン・ド・マルシェ」(本店:神戸市中央区)の前を通りがかると、目に飛び込んでくるのは『恐竜』。さらに、店の入り口に鎮座するリアルな姿に興味を引かれて近づくと、大きな口を開き頭を左右に揺らして動き出します。初見の来店客を驚かせる恐竜を見ていると「一体なんのお店?」という疑問が浮かびますが、実はインテリアショップなのです。
”元町商店街の恐竜”といえば、神戸の人たちから名物として、フォトスポットとして親しまれる存在です。しかし、なぜインテリアショップに恐竜がいるのでしょうか? メゾン・ド・マルシェの店長・馬場英二さんに聞いてみました。
馬場さんによると、現在のような目立つ恐竜のディスプレイを始めたのは3~4年前。店内では、それ以前から展示していたのだそう。
メゾン・ド・マルシェは、クラシックスタイル家具の売場面積と取扱点数では国内最大級を誇り、大阪や奈良、和歌山、名古屋、栃木など全国で店舗を展開しています。けれど、恐竜がいるのは元町商店街の本店だけ。どうやら『恐竜』は全店共通のコンセプトというわけではなさそうです。
もしや従業員の中に熱烈な恐竜ファンが……? と思い馬場さんに聞いてみると「特別、恐竜が好きな従業員がいるわけではございません」との回答が。ではなぜ、インテリアと恐竜という、一見無関係な2つを結びつけているのでしょうか?
その理由は『クラシックスタイル家具』にありました。
そもそもクラシックスタイル家具とは、バロックやロココなどの歴史的な宮廷インテリア様式であるアンティーク家具をモチーフに、現代に新しく作られた家具のことを指します。
アンティーク家具が100年以上前にデザイン・製造されたものなのに対し、クラシックスタイル家具は伝統的かつ価値のあるデザインが、現代の職人の技術と素材によって再現されているのです。馬場さんは、そんな『クラシックスタイル家具』と『恐竜』に共通点を見出しました。
「恐竜は絶滅した生き物。しかし、多くの研究者たちが化石を発掘し、研究を重ね、時には創造を交えて現代によみがえらせています。アンティーク家具もそう。過去のものになってしまった伝統様式を、職人たちが研究・解釈し復活させたものがクラシックスタイル家具として現代に普及しました。つまり、一度は廃れたものが再認識され、ふたたび人々を魅了している……そういう視点で見たとき、恐竜とクラシックスタイル家具は通じる部分があると思ったのです。そして不変のデザイン価値・魅力をなんとかして伝えたいと考え、恐竜を置きはじめました」(馬場さん)