「人と災いをテーマにした宛名のない手紙」太田三郎展 神戸・BBプラザ美術館

LINEで送る

この記事の写真を見る(2枚)

 切手を素材にした作品で知られ、岡山県津山市で独創的な創作活動を続ける美術家・太田三郎の作品展「人と災いとのありよう」が、神戸市灘区のBBプラザ美術館で開かれている。2022年9月11日(日)まで。

 会場にはコロナ禍の現在から、過去へ遡り、それぞれへの思いが込められた作品が並ぶ。

 透明の箱に入っている無数の青い切手。青い防鳥ネットの断片を菊の花が描かれた切手を表裏に貼り合わせたパーツを絡めて構成されている。新型コロナウイルスで亡くなった人を悼む作品【Bird Net-世界はつながっている「献花」】。切手の数は亡くなった人の数と同じで、会期中も増えている。新たな死者が発表されると、学芸員が「献花」している。透明の箱は長さ180センチで、美術品の展示としては珍しく、上部が開いており、棺を思わせるよう。「これだけの人が亡くなった」という作家の思いが込められている。

 マスクをモチーフにした切手シート。変形した白いマスクは、まるで生きている何かにも見える。コロナ禍で太田自身が「落ちていたマスク」を写真におさめ、代表作「切手シート」で表現した。「以前はこんなに落ちていなかった」と振り返るきっかけになったという。

 阪神・淡路大震災が起きた年の1995年から2020年まで、太田は新聞の1面に「その日拾った」植物の種をコラージュした作品を制作した。壁いっぱい展示されたその数は600枚以上。「その日に何があったのかがわかるほか、種を重ねることで希望や未来へのメッセージが込められている」と、BBプラザ美術館の小田有紗学芸員は話す。

 さらに、太田が先の戦争で失われた生命や記憶に思いを寄せた【POST WAR】シリーズ。中国残留孤児や無言館の学生たちが残した作品、そして広島だけでなく岡山で被爆した人を「切手シート」にした。作品にすることで何年たっても風化させない、忘れてはいけないというメッセージが込められている。

 このほか、2018年の西日本豪雨災害、2014年の広島土砂災害、2011年東日本大震災、そして「ウクライナ」への思いを込めた作品も。大東亜鉄道の路線が描かれた絵図を屏風に仕立て、その前に武者人形を置いた。「かつての子どもが戦地に向かう、……なんか複雑ですね」と小田学芸員。

 災いと向き合う―難しいテーマだが、作品には過去を振り返るだけではなく未来へのメッセージが込められている。小田学芸員は「ふと思うだけでもいい。何かを考えるきっかけになってほしい」と話す。

◆太田三郎展「人と災いとのありよう」
会期 2022年7月5日(火)~9月11日(日)
会場 BBプラザ美術館(神戸市灘区岩屋中町4-2-7 BBプラザ2階)
休館日 月曜
※新型コロナウイルス感染症予防対策のため 会期等に変更が生じる可能性あり


【BBプラザ美術館 公式HP】

LINEで送る

関連記事