創業1848年・業歴170年を超える老舗酒蔵が明石にある。明石を代表する蔵元の茨木酒造だ。代表銘柄の「来楽(らいらく)」は今年、全国新酒鑑評会で金賞を受賞した。そんな茨木酒造(明石市)の9代目、蔵元の茨木幹人さんに話を聞いた。
茨木酒造は播磨灘に面し、周囲には田んぼが広がる立地にある。茨木さんによると、明石の酒蔵はほとんどが海岸沿いにあるようだ。明石の地下水は六甲山系の水質で、神戸の灘とほぼ同じ品質だといい、神戸の“灘”に対して明石は“西灘”と呼ばれている。茨木酒造では全ての工程を酒造りの最高責任者の杜氏と蔵人の手作業で行う。米洗い・麹造り・発酵管理はもちろん、瓶詰・ラベル貼りまで、丁寧に行う小仕込みだからこそ、人の感性が行き届いた品質の高い酒になっているようだ。
全国新酒鑑評会という、最も歴史が古い日本酒の品評会がある。今年で110回目を迎えるこの全国新種鑑評会で、茨木酒造の代表銘柄「来楽(らいらく)」の大吟醸が金賞を受賞した。大吟醸は精米歩合が高く、米の中心の方だけを使ったお酒でフルーティーな香りが楽しめる。「来楽」は地元の名水で仕込まれ、兵庫が誇るお米の代表銘柄「山田錦」など、日本酒のために丁寧に育てた米を使用した地酒。2015年に続き、二回目の金賞に輝いた。
日本酒は若い世代があまり目を向けてくれないという面がありそこが悩みだというが、茨木さんは「洋食にも合うような味わいの日本酒も取り揃えています」と話した。20年前と比べると日本酒の世界は大きく変わっており、世間的にも様々な種類が増えているのだという。
最近ではコロナ禍で出荷が一時止まり、大変な思いをしたようだが、「家でゆっくり飲むのも楽しみの一つ」と茨木さん。続けて、「日本酒の最大の特徴として、料理と合わせておいしくなることが挙げられます。とはいえ日本酒はアルコール度数が15度が基本で、最近人気の生原酒は17度くらいとアルコール度数が高い。濃いと思われる方もいますが、僕は夏場の晩酌のときには氷を入れて口当たりをよくして飲んでいます。たくさん汗をかく夏場は、少し度数を下げて味わうのがおすすめです」と話していた。
兵庫県は日本で一番日本酒を作っている県で、地酒に触れる機会が多いため、自分の口に合うお酒を見つけてもらいやすい環境にあるのだという。茨木さんは「ここ明石で、伝統ある蔵を今後も守っていきたい」と口にした。茨城酒造では赤ちゃんでも飲める栄養たっぷりの甘酒も販売している。日本酒を飲めない人も一度、茨城酒造の思いのこもった商品を手に取ってみては。
※ラジオ関西『こうべしんきん三上公也の企業訪問』2022年8月30日放送回より