従来の腕時計は大きく分類すると「ドレッシーな腕時計」と「スポーティな腕時計」の2つに分かれていました。しかし、2010年代の後半から「ラグスポ」という新ジャンルの腕時計が登場します。どんな腕時計なのでしょうか? 登録者数が6万3千人を超える「腕時計YouTuber」であるRYさんが、『やさしい腕時計』(ラジオ関西Podcast)で解説しました。
◆ロイヤルオークやノーチラスを「ラグスポ」とは呼ばなかった1970年代
先述したように、かつての腕時計は「フォーマルウォッチ(ドレスウォッチ)」と「スポーツウォッチ」の2つのジャンルに分かれていて、明確な違いが存在しました。しかし近年、「ラグジュアリースポーツウォッチ(以下、ラグスポ)」と呼ばれる、両者の特性を兼ね備えた腕時計がトレンドを牽引しています。
「ラグスポ」の始まりは、1972年に発表されたオーデマピゲの「ロイヤルオーク」という説が有力です。
この腕時計の特徴は、これまで見られなかった「八角形のケース」を持ち、「ベルトと時計本体が一体化」するという極めて斬新なデザインにありました。また、貴金属を一切使用しないオールステンレス製である事も特徴です。
スポーティかつドレッシーな腕時計の発表は相次ぎます。1975年にジラール・ペルゴが「ロレアート」をリリースし、翌76年にはパテックフィリップが「ノーチラス」を、そのまた翌年、77年にはヴァシュロン・コンスタンタンが「222」を世に送り出しました。
しかし、各社はこれらの腕時計を「ラグスポ」という言葉で宣伝していません。80年代に入っても、ノーチラスの広告に「ラグスポ」という文言はありません。当時の広告画像の専門誌を見ると「フォーマルにもスポーティにも使用できる腕時計」とかろうじて書かれている程度でした。「ラグスポ」という言葉がどのようにして、一般に浸透するようになったのについては確かな説はありません。
◆腕時計の製造技術の進化により、スポーティ化と薄型化が進む