「柿の葉寿司」を知っていますか? その名の通り「柿の葉」で包んだひと口サイズの押し寿司です。
すっきりとした酢飯に魚の旨味がじんわりと感じられ、奈良県では郷土料理として人気が高く、全国初の「柿の葉寿司自販機」なるものが設置されているほど!
この「柿の葉寿司」、じつは和歌山県や石川県、鳥取県でも郷土料理とされています。ただし、奈良県とは異なる点があります。それはいずれの県にも「海がある」ということ。
逆にいうと、奈良県だけが「海なし」なのです。山あいの内陸に位置する奈良県ですから、輸送技術の発達していなかった大昔に海の魚を多用・多食していた……というイメージは湧きにくいですよね?
では、“海なし県”といわれる奈良県でなぜ「柿の葉寿司」が郷土料理となりえたのか? その疑問を解決すべく、「柿の葉ずし自販機」を設置した老舗店『平宗』(本社:奈良県天理市)に話を聞きました。
平宗は1861年、幕末の志士が活躍している時代に吉野上市村で創業されました。乾物、川魚などを販売していた平宗ですが、明治時代に入ると旅館を営むように。
「当初は鮎や山菜を使った料理を出していましたが、そのうち江戸時代より吉野で『夏祭りのごちそう』として伝えられていた柿の葉ずしを料理のひとつとして提供するようになりました」(平宗)
山々に囲まれ、海が遠い奈良県にとって魚は貴重な食材でした。そのため、魚を使った柿の葉寿司は夏祭りやお祝い事などでしか食べられないごちそう料理だったのです。