乗客106人が死亡、562人が負傷した2005年のJR福知山線脱線事故で、JR西日本が事故車両を保存するため大阪府吹田市の社員研修センターに設ける新施設の完成時期が、当初予定していた2024年秋ごろから約1年延期されることが、28日までにわかった。
JR西日本は、11月に遺族や負傷者に向けた説明会を開き、施設の詳細や今後の具体的なスケジュールを伝える。
事故車両の保存方法などをめぐっては、遺族や負傷者から「車両も含めて“実寸”で再現してほしい」という意見が多い。
遺族の1人は「事故を知らない人が増えてくる。本来ならば車両は現場(尼崎市久々知)に戻し、人々に見てもらうのがよい」と話す。また負傷者の家族は、「被害に遭った人たちでないと語れない事故当時の真実の姿がある。それは発生直後に個々の目で電車内を見ているから。ありのままを示すことも重要だが、遺族と負傷者の心情も汲み取り、過剰な刺激にならないような配慮をしながら慎重に進めて欲しい」と要望している。
完成時期の延期は、こうした意見を慎重に踏まえたためで、JR西日本は建物全体の設計変更や車両部品の配置を改めて検討し、整備期間の見直しを進めた結果という。
鉄道や航空での大事故では、保存のあり方について遺族らの間で意見が分かれ、結論が出るまで時間がかかることが多い。
1985(昭和60)年の日航ジャンボ機墜落事故では、羽田空港(東京都大田区)の安全啓発センターで機体の残骸や部品などを公開するまで21年かかった。