暦の上では冬が始まる「立冬」の11月7日、京都の冬の味覚「千枚漬」の漬け込みが本格化した。創業120年・京漬物の老舗「大安(だいやす)」の工房(京都市伏見区)で熟練職人による作業が公開された。
千枚漬は、直径20センチ、重さ約2キロの京野菜「聖護院(しょうごいん)かぶら」を使用。法被姿の職人たちは「シュッ、シュッ」という音を響かせながら、かんなで薄くスライスし、次々と樽に敷き詰める。
■伝統「漬け替え製法」~火を通さぬ素材の美味しさを
大安の千枚漬は、塩で3日間漬け込む後「下漬け」の後は、北海道産の昆布や秘伝の天然調味料で風味を付けてさらに2日間置く「上漬け」をする。こうして伝統ある「漬け替え製法」を守り伝えている。冬の寒さでかぶらの甘みが増すため、京都特有の底冷えが始まる立冬前後に漬け込まれた千枚漬が、最も美味しいという。歳暮や迎春準備に向けた12月までが最盛期。シャキッとした食感と、なめらかな舌触りが特徴。
新型コロナウイルスの感染拡大から3度目の年末を迎える。一般公開は3年連続で中止したが、季節感を忘れがちな日常で、大安ではこうした冬の風物詩の公開を大切にしている。
大安の大角安史・三代目社長は「いよいよ千枚漬が美味しくなる季節。コロナ禍で売り上げに苦戦したが、自慢の千枚漬を皆さんの食卓に届けようと、職人も心を込めて作っている。原料は契約農家さんから直接仕入れ、秘伝の調味液もこだわりがある。 『火を通さない素材のおいしさと、職人の技術の調和』があり、これを楽しんでいただきたい」と話す。
大安では今年(2022年)、コロナ禍前と同じく約9万個のかぶらを発注した。なお、昨シーズン(2021年冬から今年4月)にかけて、約700樽(1樽約80個)、約5万7000個を漬け込んだ。