播磨に新酒仕込みの季節が来た。姫路市広畑区本町の田中酒造場(田中康博・6代目当主)で28日、伝統の「石掛式天秤(てんびん)搾り」が始まった。
田中酒造場は「温故創新」をモットーに、1835年(天保6年)から180年以上、姫路の地で酒造りを続けている。 有名な純米大吟醸「白鷺の城」は1988年(昭和63年)に全国新酒鑑評会で初めて金賞を受賞して以来のロングセラー。
2022年度フランス・パリで開催された日本酒コンクール「KURA MASTER」では、純米酒部門で「Chateau SHIRASAGI 65(名刀正宗 乙天)」、純米大吟醸部門で「亀の甲 四拾七」、生酛部門で「生酛純米吟醸 白鷺の城」がそれぞれ金賞を受賞した。
江戸時代から続く天秤搾りは、まず、サクラの木でできた酒槽(さかぶね)の中に、布袋に重ね入れた”醪(もろみ)”を入れ、盤木と呼ばれる重石を置いていく。
そして約5メートルのケヤキの棒の端につるされた石で搾り出す。「てこの原理」が生きている。
酒槽は 、高さ80センチ、幅70センチ、奥行き1.3メートルの大きさ。もろみは兵庫県産の米で仕込むが、田中当主によると「今年(2022年)は比較的雨量が少なく、米の出来が硬めになっため、米の蒸し方や洗い方を変えた」という。毎年、変わらぬ味わいを提供するためには勘と技が必要だ。
もろみの圧搾方法では最古とされ、田中酒造場では1960年代までは行われていたが、オートメーション化が進み、いつしか酒槽や天秤はお蔵入りに。
しかし「石掛式天秤搾りの技術を後世に伝えたい」いう田中当主の強い思いで、2000年に復活させた。