灘五郷の一つ「西宮郷」。この酒造りのまちに1982(昭和57)年、生活文化遺産である酒造りの歴史を後世に正しく伝えることを目的に「白鹿記念酒造博物館(酒ミュージアム)」(兵庫県西宮市鞍掛町)が誕生、2022年に40周年を迎えた。近代建築の“記念館”と、辰馬本家酒造の旧本蔵をそのまま利用した“酒蔵館”、2つのゾーンで構成される博物館として、これまでに100万人以上が訪れた。
12月7日から同ミュージアム内・酒資料室(記念館)の展示で「変化する酒蔵建築」を紹介している。国内外の酒造会社などの協力を得て、さまざまな酒蔵の写真や資料を集めた。2023年3月5日(日)までのロングラン開催。
■「戎蔵」のランドマーク“大看板”との別れもあれば、貴重な絵図との再会もあり
白鹿ブランドを展開する辰馬本家酒造には、1964(昭和39)年に完成した「戎蔵」(当初は醸造場、のちに貯蔵庫)があった。老朽化のためランドマークとして親しまれた大看板が姿を消したが、その上層階に保管されていた資料に、明治時代の「旧本蔵(現在の酒造館)」などの様子を忠実に描いた絵図が発見された。極めて保存状態が良く、今回初公開される。
■江戸時代に灘、伏見の酒蔵が大型化
江戸時代、水に恵まれた灘(兵庫)や伏見(京都)で造られた酒は、それぞれの水質から「灘の男酒(硬水・辛口)、伏見の女酒(軟水・なめらか)」と称され、大消費地・江戸の需要に応えるため大きく発展した。
樽廻船で江戸に運ばれたことから、酒の生産量を増やすため、特に灘では海の近くに大規模な酒蔵が数多く建てられ、大型化していく。