デュエットといえば、ついつい演歌や歌謡曲を思い浮かべてしまいますが、1970年代から1980年代にかけては若者の象徴だったフォークシンガーも数々のデュエットソングを発表しています。昭和のフォークシンガーが歌った名作デュエットソングについて、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 今回はラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』50回記念ということで、公開収録イベントでお送りしております。テーマは「昭和のフォークシンガーたちが歌った名作デュエットソング」。デュエットというと、演歌や歌謡曲っぽいイメージが強いかもしれませんが、1970年代から1980年代にかけては若いフォークシンガーたちの間でも数々のデュエットソングが作られていたんですね。たとえば、吉田拓郎さんと、かまやつひろしさんが歌った「シンシア」(1974)。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 日本のフォークソングというと、暗くて深刻なテーマが多い気がしていたんですが、これはとても純粋なラブソングですよね。
【中将】 拓郎さんはフォーク=プロテストソングという殻を打ち破った第一人者ですからね。この曲なんて当時の人気アイドルだった南沙織さんを思って作ったわけですから。ちなみに「シンシア」は南さんのニックネームです。
【橋本】 好きなアイドルに捧げる曲を、かまやつさんと一緒に歌おうとなった流れが意味わかりませんね……。
【中将】 ザ・スパイダースが解散して以降、かまやつさんはフォーク路線への転向を模索していました。一緒に何かやろうと拓郎さんにアプローチしていく中で、この曲に行き着いたそうです。けっこうヒットして、翌年に拓郎さんがかまやつさんのために書き下ろした「わが良き友よ」も大ヒットします。
拓郎さんとともに昭和フォークソングで欠かせない存在といえば、井上陽水さんですが、陽水さんも忌野清志郎さんとの「帰れない二人」(1973)や安全地帯との「夏の終わりのハーモニー」(1986)、奥田民生さんとの「ありがとう」(1997)などいろんなデュエットソングを作っていますね。
【橋本】 「夏の終わりのハーモニー」は大好きです。カラオケでも定番のデュエットソングですよね。陽水さんと玉置浩二さん、どちらも特徴的な声の持ち主ですが、この曲では玉置さんが少し引いて陽水さんが引き立つようにされているのかなと感じます。
【中将】 安全地帯は陽水さんのバックバンドをしていた時期がありますしね。「ワインレッドの心」(1983)や「恋の予感」(1984)の歌詞を提供してもらってブレイクのきっかけを作ってもらった恩人でもありますから。
拓郎さん、陽水さんと紹介してきましたが、お次は谷村新司さんが小川知子さんと歌ったこの曲です。「忘れていいの」(1984)。
【橋本】 これは濃厚なデュエット!
【中将】 これは当時、谷村さんが好きだった不倫ドラマ『金曜日の妻たちへ』(TBS系)の世界観をモチーフに作った曲です。ドラマに出演していた小川さんに直接オファーしてデュエット。しかも歌番組とかで歌うときはほとんど抱きしめ合ったままで、サビではドレスの胸元に手を差し込むエロエロな振り付け……好き放題してますね。