駄菓子の定番・麦チョコ。穀物をふくらませたポン菓子にチョコレートをコーティングした、サクサク食感が特徴のお菓子です。大人から子どもまで幅広い世代に人気のこのお菓子を作るのは、1877年創業の老舗チョコレートメーカー「高岡食品工業」。兵庫県尼崎市大物町の工場で作る『むぎチョコ』は、昨年(2022年)、誕生から50年を迎えました。
一般的に、チョコレートの売れ行きが好調なのは冬の時期。”夏にも人気が出る商品を作りたい”と考案したのが『むぎチョコ』です。「ポン菓子にチョコレートをからめただけ」と思われがちですが、その作業は一筋縄ではいかないのだそう。チョコレートの量やコーティングの仕方などを試行錯誤し、約2年の開発期間を経て1972年に『むぎチョコ』が生まれました。
戦後、高級品だったチョコレート。当時の社長・高岡康博さんは「子どもたちが自分のおこづかいで買える価格帯のチョコレート」作りにこだわったそう。1袋30円の『むぎチョコ』にも、そんな思いが込められています。
『むぎチョコ』の作り方は、誕生当時から変わっていません。大きな回転釜にポン菓子を入れ、チョコレートを刷毛(はけ)でかけてなじませます。
チョコレートの粘度や釜を回転させる速さ、乾燥させる時間については、ただマニュアル通りにやればよいわけではありません。その日の気温や湿度を考慮し、職人の経験と感覚で仕上げます。
その技術は若い世代へと受け継がれ、現在は30~40代の職人が麦チョコを作っているそう。取締役経営企画室長の松田恩(まつだめぐみ)さんは、「この味をずっと守りたい」と意気込みます。
大物町の工場で、11月から翌年6月まで毎週末行われている“工場直売”も人気です。定番の『むぎチョコ』や人気商品『ショコラ生チョコ仕立て』などをはじめ、ここでしか買えないものもあって好評なのだそう。その中でも、家族連れや若い世代から注目を集めているのが、昨年2月に導入された「麦チョコサーバー」です。