酒米の生産地としても名高い兵庫県加西市。平坦な地形と温暖な気候が特徴で、最近では、“酒米の王様”と呼ばれる「山田錦」以外の品種にも力を入れているそう。栽培が進められている酒米について、加西市で1839年から続く酒蔵「富久錦」代表取締役社長の稲岡敬之さんに聞きました。
■品種により異なる味わい
専業農家も多い加西市。長い期間かけて酒米を収穫できるよう、早く成長する「早生(わせ)」、遅い「晩生(おくて)」、その中間の「中生(なかて)」の、さまざまな品種に挑戦しています。
酒米は、日本酒の味の基本を決めるもの。同市を代表する山田錦を使用した酒は「流れるようなキレイなのどごしが特徴」と稲岡社長。早生の代表「兵庫夢錦」は、山田錦よりもスッキリめで酸味との相性も抜群。晩生の「愛山(あいやま)」や「渡船」は、ふくよかな味わいになるそう。酒米による味の違いを比べてみるのもおもしろそうです。
■今年度初醸造 酒米「雄町」でつくる日本酒
1997年度から、加西市産の酒米のみを使用することにこだわる富久錦。今年度初めて醸すのは、晩生の「雄町(おまち)」を使用した日本酒です。
岡山県の代表的な酒米で、芳醇なお酒が造れることで知られている雄町。実は、山田錦が誕生するまでは播州平野でも盛んに栽培されていたそう。そこで「加西市の気候風土に合う酒米のはずだ」と、豊倉町の農家が4年かけて復活させました。
その雄町を使用して誕生したのが、『純青 雄町 生酛純米吟醸』(3月16日発売)。その味わいについて稲岡社長は「独特の、雄町らしい雰囲気が感じられる」と話します。
■地元・加西での酒づくり そのこだわり
先代から受け継がれているのは「品質第一」との思い。創業180年以上の歴史を持つ富久錦では、年代ごとに、その時代に合わせた酒づくりを行ってきました。稲岡社長がこだわるのは、地元密着の酒づくりと、製造方法の原点回帰です。