兵庫県豊岡市で目指すこと【上】平田オリザ 人口減少時代の街づくりとは | ラジトピ ラジオ関西トピックス

兵庫県豊岡市で目指すこと【上】平田オリザ 人口減少時代の街づくりとは

LINEで送る

この記事の写真を見る(1枚)

 劇作家で演出家の平田オリザ氏が2019年9月、兵庫県豊岡市に移住し、本格的な活動を始めた。東京生まれ、東京育ちの平田氏は、なぜ兵庫県に移り住んだのか。豊岡市に見出した可能性とは何か。ラジオ関西の『ひょうごラジオカレッジ』で2019年12月に放送された「下り坂をそろそろと下る」と題した講演から、2回にわたって平田氏の思いを紹介する。第1回は、「文化によるまちづくり」について――。

平田オリザ氏
平田オリザ氏

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 私は劇作家、演出家ですが、大学教員もしており、文化を通じた街づくりのお手伝いをしています。兵庫県内では豊岡市や宝塚市、西宮市などの市政アドバイザーを務め、そのご縁で豊岡市に引っ越してきました。県民のみなさんよろしくお願いします。

 今日は「文化によるまちづくり」について話をします。なぜ文化なのか。今、地方では人口減少が激しくなって、このままでは多くの自治体が将来消滅してしまうのではないかと言われています。

 人口減少問題の本質は何なのか。私は大学の教員をやってきて、「自分のふるさとに雇用がないから帰らない」という学生に会ったことがありません。地方に雇用はある。人手不足です。それでも若者たちは帰らない。どうしてなのか。

 地方自治体が「雇用」といってきたのは2つ問題があったと思います。1つは高校生を都会に出さない政策だった。しかし大学進学率は上がっており、特に女子の4年生大学への進学率が上がり、この女子たちが戻ってこない。

 豊岡を例にとれば、但馬地方には4年生大学がないので、7割から8割の高校生は一度は外に出る。これはしかたがない。ところが男子は5割が戻ってくるのに、女子は25パーセントしか戻ってこない。女性が戻ってこなければ人口は増えません。もちろん個人の自由なのですが、社会全体で考えると大きな問題になってきた。

 もうひとつの問題は、雇用と言ってきたのは、男性目線の政策だったのではないか。男性の雇用を作れば女性は黙ってついてくる。昭和の時代の感覚だったのではないか。今は、奥さんが反対する移住などありえない。女性が住む街を選び、男性はその街で仕事を探します。もちろん女性も探します。

 では女性はどんなポイントで住む街を探すのでしょうか。それは教育と医療、スポーツや食文化を含めた広い意味での文化です。居場所があるか、安らぎがあるか、友達ができるか。そういうことを女性たちは移住に際して考えます。


兵庫県豊岡市で目指すこと【下】平田オリザ 国際演劇都市の可能性
https://jocr.jp/raditopi/2020/04/26/49290/

LINEで送る

関連記事