あるとき、とあるリスナーさんから寄せられたメッセージに目が留まりました。
「外国で食べたパンが忘れられなくて……。あんなにおいしいのに日本ではあまり売っていないのはなぜなんですか?」
そのあまりにおいしいパンというのが、「ブリオッシュアテット」と呼ばれるパンなんだそう。早速近所のパン屋さん20店舗ほどをまわって探してみたのですが、やはり売っていないんです。
そもそも「ブリオッシュアテット」はフランスでは有名なパンだそうで、その姿はまるで雪だるまのよう。円形の土台の上に、さらに小さな円形の突起が乗っています。ちなみに、「ブリオッシュ」はフランス語で「ブリ=砕く」「オッシュ=ゆさぶる」という意味があり、フランスの菓子パンの1種を指します。そして、「アテット」はフランス語で「僧侶の頭」を意味するのだとか。
どのパン屋さんを探しても見当たらないため、知り合いのパン職人に尋ねてみました。
「はいはい、ブリオッシュアテットな。15年くらい前まで作ってたけど、やめたわ(笑)」
なぜ作るのをやめてしまったのか……?
「小麦粉とバターを同量入れるし、水の代わりに牛乳を使う。バターいっぱい、牛乳いっぱい、あと卵もいっぱい使うからむちゃくちゃコストがかかるねん」
さらに話を聞いてみると、形成方法も非常に複雑なよう。
「ちぎれる寸前まで引っ張って丸めた生地を小さな型に入れて成形する僧侶の頭部分が簡単なようで難しいねん。あの形をきれいに作れるのは技術のあるパン職人だけ」
そのうえで、作るのをやめた理由については「コストの面、作る手間のことを考えたら正直作るの嫌やねん(笑)。だからやめてん」と笑い混じりに話してくれました。
パン職人にそこまで言わしめるブリオッシュアテット。どうしても食べたくなってしまった私は、再び探し回ることにしました。
「ブリオッシュナンテール」「ブリオッシュムスリーヌ」「ブリオッシュクーロンヌ」など、別の種類の“ブリオッシュ”は見つかったのですが、肝心の「ブリオッシュアテット」が見つかりません……。期間限定で作ることはあるものの現在は取り扱っていないというお店や、そもそも作っていないお店ばかり。
それでも諦めず、探して探して……。100店舗ほどのパン屋さんを回って、ようやく見つけることができました! 念願叶って手に入れたブリオッシュアテットを自宅に持ち帰り、早速食べてみました。