兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市)では、5月28日(日)まで、特別展「丹波の茶道具 茶の湯を彩る兵庫のやきもの」が開かれている。専門家による分かりやすい解説シリーズ「リモート・ミュージアム・トーク」の今回の担当者は、同館学芸員の萩原英子さん。全2回にわたって同展の見どころを教えてもらう。第2回は「茶道具を取り合わせて趣向を凝らす」。
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兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市)では、特別展「丹波の茶道具 茶の湯を彩る兵庫のやきもの」を開催しています。丹波焼の茶道具は、他の産地に比べるとあまり知られていませんが、本展では、各時代の茶人に大切にされ、今日まで受け継がれてきた丹波の茶道具を紹介し、その魅力に迫ります。
茶事と呼ばれる茶会の席では、掛軸や花入、香合が床に飾られ、茶碗や茶入、水指が茶室を彩っています。また、茶会では、懐石とよばれる料理が振る舞われ、亭主は、その日の来客の組み合わせや季節、茶会の目的によって、当日用いる道具を選び、種々の道具を取り合わせ、菓子や料理、それらを盛り付ける器など、茶事をとりまく全てのものを準備します。
本展では、当館の所蔵品を中心に兵庫県で生み出された様々なやきものを取り合わせて、展示室内に濃茶の席、薄茶の席、懐石の席をそれぞれ再現しています。丹波で活躍する現代作家の作品を含め、各産地で作られたやきものの茶道具を通して、茶の湯文化の一端を紹介します。
■濃茶の席
丹波「赤土部灰釉束柴形桶(あかどべかいゆうたばねしばがたおけ)」は、木製の桶を模して作ったものです。束ねた柴の形と似ていることから「束柴」(たばねしば)と呼ばれています。外面にヘラなどの工具で口縁部から底部に向かって一定の間隔で沈線を描き、内面は、外面の筋に添って型で凸線を施して隣り合う板材一枚一枚を丁寧に表現しています。赤土部の上から灰釉を施した部分が光沢のある黒色に発色しています。丹波では、元禄年間頃(1688~1704)大小さまざまな束柴形の桶が作られ、大きさや形などが整ったものは水指として用いられました。
■薄茶の席
王地山焼(おうじやまやき)は、三田焼を創業した神田惣兵衛が文政11年(1828)に篠山城北東で操業を開始し、明治2年(1869)まで生産しました。嘉永年間(1848~54)に原料の陶石の専売制を導入するなど、藩が関与しました。本作は、明時代末期の崇禎年間(1628~44)に景徳鎮窯(江西省)で作られた「祥瑞」(しょんずい)と呼ばれる上手の染付を写した水指です。胴部に円形の窓を設け、その中にそれぞれ異なる山水人物図を描いています。王地山焼は、染付や青磁を中心に瑠璃釉などを生み出しています。