兵庫県・神戸の玄関口、新神戸駅近くに不思議な印象を受ける洋食店があります。インスタグラムに記された店の紹介文は「100年前のとある港町で、著名人や作家がこぞって愛した洋食屋」で始まります。老舗の洋食店かと思いきや、最後には「※この物語はフィクションです。」との一文。そう、店の歴史が“架空の物語”になっているのです。店の紹介文だけでなく、それぞれの料理にも短編小説のようなエピソードが付いています。
そんな独特のコンセプトで展開しているのは、神戸の中心部を通るフラワーロード沿いにあるレストラン「洋食パリス」(以下、パリス)です。なぜこのようなコンセプトにしたのか、オーナー・林さんに話を聞きました。
■名店と戦うため生まれた秘策“フィクション”
老舗の洋食店も多い神戸エリア。古くからオランダなどヨーロッパ諸国と関わりがあり、興味深い歴史を持つレストランも多数。一方パリスは、昨年12月にオープンしたばかりの新店です。
「有名店に立ち向かっていくのはなかなか難しい……」。
そう考えた林さん、「小説のような架空の歴史があれば面白いのではないか」とひらめいたといいます。そこで、開店日の12月24日にちなんでキリスト復活にかけた物語を考えたのだとか。
これまで、インスタグラムでの発信を受けて東京から来た人もいるそうで、店は、60〜70代の人は懐かしい、若い人は新しいと感じるような雰囲気。幅広い年齢層から支持を得ているとのことです。
■独自性は物語だけでなく料理そのものにも
パリスのメニュー。たとえばハンバーグステーキには「アメリカのアムトラック(食事ができる列車)の忘れられない味を再現したもの」という架空の物語が添えられています。