《知床遊覧船沈没事故1年》「声をあげられない被害者のために・・・」JR福知山線脱線事故・負傷者の思い | ラジトピ ラジオ関西トピックス

《知床遊覧船沈没事故1年》「声をあげられない被害者のために・・・」JR福知山線脱線事故・負傷者の思い

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 北海道・知床半島沖で26人が乗った遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故は、20人の死亡が確認され、6人が行方不明のまま、23日で発生から1年を迎えた。

 乗客の家族らへの長期的な支援が、これから本格的に必要となる。

 国土交通省の公共交通事故被害者支援室は、事故翌日、相談窓口を24時間体制とした。電話やメールで受け付ける形式だが、過去の事故で被害にあった「当事者」は、声を上げにくかった実情から、より細やかな対応が必要だと訴える。

 鉄道やバス、航空機、船舶といった旅客輸送を担う国内の公共交通事業者で、大規模な事故が起きた際、被害者への情報提供や精神的ケアのあり方などをまとめた「被害者等支援計画」を策定している事業者は極めて少ない。策定しているのは大手事業者が中心で、沈没した船を運航していた「知床遊覧船」では策定されていなかった。

 2005(平成17)年に起きたJR福知山線脱線事故で負傷した30代の女性は、ラジオ関西の取材に対し「加害企業のみならず、公的機関が、より現実的に、具体的にどういうサポートができるのかを発信することが必要。知床沖沈没事故のニュースを見聞きするにつけて、自分の18年間を思い返す」と話す。

 この女性は脱線事故で骨折し、車両内の光景が脳裏に浮かぶなど、心身ともに苦しんだ。

 経験したことがない事態と向き合う中、「自分自身が、しかるべき窓口に電話をかけて(つらい胸の内を)話すことが苦痛だった」と話す。
 女性は「特に事故の被害にあった直後、精神的につらい時に、自らが立ち上がり、アクションを起こすことは、とてもエネルギーがいる。折しもコロナ禍で対面接触が難しい中で、zoom(ズーム)でのオンライン会議が「説明会」として機能することがわかった。家でも職場でも対応できるので、自分から大きなアクションを起こさなくても、行政が発信していることを受け取ることができるのは大きなメリットがあるように思う。
 18年前、脱線事故が起きた直後ならば、このような概念がなかっただろうし、ほかの事故の被害者の動きを知る手段もなく、アドバイスを受けることも、アドバイスすることもできなかった。個々の事故が別々のものとしてあるのではなく『ひとり置いてきぼりにしない』という発信を、国がもっと積極的に進めることが必要だ」と訴える。

 JR福知山線脱線事故では、加害企業であるJR西日本の担当者が、遺族や被害者と会社との橋渡し役として、示談や補償交渉に当たるが、心身の不調を訴え余儀なく交代するケースもあるという。

 一方、被害者にとって事故発生直後は、情報収集する気力も起きず、長期間にわたってけがや精神的苦痛と向き合う。この女性が事故から18年を経て思うことは「必要なことはすべて伝えてほしい、教えてほしい。聞きに来てほしい。負傷した状態で、精神的にも落ち込んでいる状態で声を上げ、支援に向けた行動を起こすことは非常に辛い。 公共交通の事業者はもちろん、行政や警察など公的機関が中立的な立場で接点を持ってもらえることは力強い。それぞれが組織として機能している以上、時には担当者が交代して、一から関係を作る大変さもあるが、そういう動きが進み、声を上げやすいシステムが確立されたら」と望んだ。

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