新茶のシーズンが到来。街中でも「新茶」の文字を目にするが、そもそも新茶とは一体どういうものを言うのか。新茶を淹れる際のポイントなどを、100種類以上の茶葉が揃う日本茶専門カフェ「神戸チャイハーネ」のオーナー・植木佑平さんに聞いた。
「新茶は春に開く最初の新芽だけを摘み取り、若干弱めの乾燥でフレッシュに仕上げた一番茶。抜ける香りが心地よく、上品で芳醇な旨味が広がります。シーズンは4月上旬から6月上旬にかけて。日本の各地で旬のお茶が順々に生まれていきます」(植木さん)
新茶が芽吹く時期の統計がとられており、桜前線と同様に“新茶前線”というものが存在するのだそう。
新茶を淹れる際のポイントを教えてもらった。
「熱湯は使わず70度ほどに冷ましたものを使ってください。新茶はカフェインが多いので湯が熱すぎると苦味成分が出てしまい、この苦味でうまみを消してしまうのです。余計な苦味を出さないようにするために、湯の温度はかなり重要です。熱湯は冷めた器を通るごとに温度がおよそ10度下がるため、この作業を繰り返すことで温度を調整することができます」(植木さん)
植木さんおすすめの新茶は、鹿児島県志布志産の「さえみどり」。新茶の良いところが存分に感じられ、しかもクセがないので多くの人に喜ばれるような仕上がりだという。店で提供する際は二煎目、三煎目と味の変化を楽しむ人も多い。一煎目は70℃のお湯で1分ほど抽出して提供するが、二煎目は一煎目よりも高めの温度のお湯を使用。茶葉もひらいているので抽出時間は15秒ほどにする。一煎目よりもコクが出て、どっしりとした味わいが感じられるそうだ。
お茶といえば“八十八夜”という言葉が連想されるが、この言葉の意味について植木さんは「八十八夜とは立春から数えて八十八日目の夜という意味で、現在の暦では5月2日にあたります。静岡や九州各地、宇治などで八十八夜あたりに摘まれた新芽はもっとも美味しく栄養価が高いとされ、縁起物の一面も持ち合わせています。当店では八十八夜前後からの、まさに旬のど真ん中に摘まれた茶葉のみ取り扱っています」と説明。
客のなかには茶が好きであちこちを訪ね歩き、最終的に同店に行きついたという人もいるのだそう。「日本茶の飲み比べができるティーパーティーなど、イベントも開催しています。参加された方からは『お茶の新しい魅力が発見できた』など嬉しい声をいただきます」と植木さんは笑顔で語った。
(取材・文=バンク北川 / 放送作家)
◆神戸チャイハーネ
「日本茶復権」を掲げる店主が全国の茶農家さんを訪ね、直接買い付けたお茶がおよそ100種類揃う日本茶専門カフェ。おいしい日本茶に合うランチやスイーツも提供。
【場所】六甲ライナー・アイランドセンター駅直通の神戸ファッションマート2階
【営業時間】午前11時~午後6時
【定休日】なし(水曜日はランチのみ、午後3時までの営業)
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