発生から15年となったJR福知山線脱線事故は、新型コロナウイルスの影響で追悼慰霊式などさまざまな行事が取り止めになり、遺族や被害者はそれぞれの胸の中で犠牲者を悼み「事故を忘れない」と誓った。
JR伊丹駅前の「カリヨンの鐘」の前で25日、事故発生時刻の午前9時18分に合わせて、事故車両の3両目で大けがをした伊丹市の増田和代さんら有志が用意した白と青、約30個の風船に参加者がペンで追悼のメッセージを書き込み黙祷した。
また東日本大震災で長男・健太さん(当時25歳)を失い、脱線事故の遺族も訪ね歩いた宮城県大崎市の田村孝行さんからもメッセージが届いた。
増田さんは母とともに、当時開催されていた「愛・地球博(愛知万博)」へ向かうために快速電車に乗車。事故で腰の骨を折るなど重傷を負った。その後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、過呼吸やパニック障害にも苦しんだ。睡眠薬や抗うつ剤が手放せない生活が続いた。
事故の翌年、シーズー犬「ゆめ」を飼い始めた。あどけない姿を見ると心が落ち着く。屋外を歩くリハビリでも一緒だった。もともとは会社勤めをしていたが、大好きな犬にかかわる仕事がしたいと、トリマー養成の専門学校に通った。
事故から8年経ち、伊丹市内で夢だったドッグサロン「yume&fairly」を開いた。もちろん心の友「ゆめ」の名前から取った。