数々の輝かしい記録を樹立し、常にトップを走り続けてきた元陸上女子短距離選手・高橋萌木子(たかはしももこ)が、4月22日、ラジオ番組『アスカツ!』(ラジオ関西)に出演。これまでの経験について語った。
学生時代は、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)100メートルで史上初の3連覇を達成。大学進学後も活躍は続き、2007年、2009年には世界陸上に出場。2011年には4×100メートルリレーで当時の日本新記録を樹立し、2012年にはロンドンオリンピック代表にも選出された。
「インターハイ3連覇ってなんかもう領域が違うというか……。すごい……」と驚嘆する番組パーソナリティの西岡に対して「すごくないですよ。いろんな運が重なったんだと思います」と謙遜した髙橋。「高校1年生の(インターハイの)ときはすごい雨で……。それを私1人だけがポジティブに捉えて『勝てるかもしれない』と思ったから勝てた。イメージで走れた」と振り返り、「目の前で起きている出来事をポジティブにする転換力はあったのかもしれません」とコメントした。
数々の記録を打ち立て、名実ともに日本を代表するトップランナーにのぼり詰めた高橋。そんな彼女にも挫折の経験が……。代表に選出されていた2012年ロンドンオリンピック。高橋は大会前から不調に陥り、その結果、リレーメンバーから外されてしまったのだ。
「ずっと選ばれ続けて4年間準備してきたけど、当日だけ走れなかった。1番走りたかったレースで補欠にまわったのが苦しかった。ずっとつないでいた細い糸がプツンと切れた瞬間。どんなに動ける体があっても、切れた瞬間本当に動けなくなった」と胸の内を吐露。
帰国後はグラウンドにも行けなくなったそうで、「初めての出来事だったからこそとまどいもあったし、たぶん一種のバーンアウトだった」とコメント。さらに、当時の悲痛な思いについてもこのように語った。
「5番目の人の立場を知ったんですよ。4人で走るリレー。ずっと4人のなかにいたので、5番目の気持ちを知らなかった。でも5番目以降のその気持ちも初めて味わって……。競技場を見ながら泣いた」(高橋)
当初、ロンドンオリンピック後に引退することを考えていたという高橋。その決意の理由としてオリンピックを迎えるまでに「悔しい」という気持ちがなくなってしまったことを挙げ、「なんのために陸上をやっているのかわからなくなっていた」と明かした。
しかし、ロンドンオリンピックで走ることはなかった。「この競技場で走れていない。自分のためにも約束は果たしてあげないと。できるかできないかは別として、もう1回挑戦しよう」。その思いが原動力になっていたという。
「もしあのとき走っていたら私は今ここにいないな。神様がそうさせたのかな」とつぶやいた高橋。ロンドンオリンピックで走らなかったからこそ、人間性を高められたという。「その先に深いもの、大切なものが待っていることがのちに分かった。そういった部分を知ることができてよかったと思っている」としみじみ語った。