今年1月、札幌市のゴミ回収施設にて資源ごみの中から現金1000万円が見つかったことが話題となりました。期限だった4月30日までに持ち主が特定されなかったため、この1000万円の所有権を札幌市が得ることになりました。
こういった大金の落とし物があった時に度々話題に上がるのが「落とし物を届けた人への謝礼」です。もし落とし主が見つかった場合、拾い主が落とし主からその金額の“10パーセントの謝礼”を貰うことができる……という話は何となく聞いたことがありますが、誰がどこで拾うかで所有権なども変わってくるとのこと。落とし物のルールや手続きなどについて『かなえ法律事務所』(神戸市中央区)の森本圭典弁護士に聞きました。
まず『落とし物や忘れ物を拾った時』の権利について。「落とし物を警察署や交番へ届けることにより、“拾得者”としての権利を得ることができます」と森本弁護士。
「拾得者が得られる権利としては、まず、『遺失者(落とした人)に報労金を請求する』という、いわゆる謝礼を貰うことができる権利があげられます。遺失者が判明した場合、落とし物の価値の“5〜20パーセントの間”で遺失者から礼を受け取るということが『遺失物法』で定められています」(森本弁護士)
筆者も「10パーセント貰える」とは聞いたことがありましたが、森本弁護士によると、正確には「5〜20パーセント」という幅があるとのこと。もし1万円なら500〜2000円と結構な差がありますが、謝礼額はどのように決められるのでしょうか。
「遺失者と拾得者の協議により、5〜20パーセントの範囲で報労金を決めることになり、その際には遺失物の価値や種類、拾得の難易など諸般の事情を考慮して判断します」(森本弁護士)
注意点もいくつかあります。例えば、拾った場所について「駅やデパートなどの施設で拾った場合には警察署や交番ではなく、その施設へ届ける必要があります。また、“謝礼は施設と折半”になるため、落とし物の価値の2.5〜10パーセントが報労金となります」と森本弁護士は言います。拾得物の届け出期間も設定されており、施設で拾った場合には24時間以内、施設以外で拾った場合には7日以内に提出をしなければ拾得者としての権利がなくなるそうです。もし落とし物を拾った場合には速やかに提出する必要があります。遺失者が見つからなかった場合、「3か月以内に持ち主が判明しなければ、その落とし物を自分の物として受け取ることができます」とのこと。
これらの拾得物のルールを踏まえた上で、ケース別に拾得物の権利がどうなるかについて森本弁護士に解説してもらいました。
◆施設内で従業員が仕事中に拾った場合
ーーデパートや駅など、その施設で働いている従業員が落とし物を見つけた場合、その権利はどうなるのでしょうか?
【森本弁護士】デパートなどの施設が拾得者となります。従業員個人が拾得者になるわけではありませんので、当然、拾得者の権利は施設のものとなります。