ダンスは最近の若者文化だと思い込んでいる人が多いかもしれません。しかし、実は日本では戦前から幾度もの爆発的なダンスブームが起こり、音楽シーンでも流行のリズムを取り入れた楽曲が多数生まれていました。今回は昭和歌謡を語るうえで欠かせない“ニューリズム”について、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。
(※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』より)
【中将タカノリ(以下「中将」)】 今回のテーマは「昭和歌謡はダンスミュージックだった?」でいきたいと思います。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 ダンスミュージック! 最近は歌いながら激しいダンスを踊るアイドルやグループがたくさんいますが、昭和ってどうなんでしょうか……。
【中将】 ダンス文化は現代に近づけば近づくほど盛んになって、昔は全然だったと思っている人が多いかもしれないけど、実は日本は戦前から世界有数のダンス大国でした。
【橋本】 戦前から!? 何を踊っていたんですか?
【中将】 ジャズやタンゴ、ワルツですね。今でいう社交ダンスみたいな感じですが、夜な夜な若者たちはダンスホールに集まり、お酒を飲みながらダンスに興じていたわけです。
【橋本】 今のクラブみたいな場所がすでに存在していたんだ! いつの時代も踊りたい人っているわけですね。
【中将】 「踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損々」って言葉もあるように、日本人は西洋音楽が入ってくる前から、そもそも踊るのが大好きな民族なんですよ。
【橋本】 それでダンスミュージックの歌謡曲も存在したと……。
【中将】 そういうことです。戦前だとジャズの1ジャンルであるスウィング。最近、番組でもよく紹介しているディック・ミネさんとかですね。戦後だとブギウギ。いろんな曲がありますが、今回は代表的なヒット曲をご紹介します。笠置シヅ子さんで「東京ブギウギ」(1948)。
【橋本】 これは私も大好きな曲です! でもこれで踊るイメージはなかったですね……。
【中将】 笠置さんはOSK日本歌劇団出身なこともあり、めちゃくちゃ踊りながら歌うスタイルで有名になった人なんです。この曲が出たのは戦後3年目。まだまだ直立不動で歌う人が多かった時代ですからね。