キョロキョロと動く目玉が印象的な、オレンジ色のくまのかき氷器「きょろちゃん」。かき氷ブームが到来した1970年代に発売され、かわいい見た目と目新しさからたちまち大ヒット商品となりました。きょろちゃんの歴史について、製造元であるタイガー魔法瓶の広報・林さんに話を聞きました。
―――いつ誕生した?
【林さん】 1970年前後に電気冷蔵庫が普及したことで、家でかき氷を作るという文化が広がりました。各メーカーから家庭用のかき氷器が販売されるなか、当社でも1969年から通常デザインのかき氷器を販売していました。そんなかき氷ブーム真っ只中の1976年、もっと子どもたちからの人気が出るデザインのかき氷器を作るべく誕生したのが、「ハンドルを回せばお目目がくるくる」というキャッチフレーズのついた初代きょろちゃんでした。
しかし、期待とは裏腹に「あまりかわいくない……」というお声があり、初代きょろちゃんはあまり人気が出なかったんです(笑)。それを受けて翌年、「くま型」の初代に加え、出っ歯が特徴の「ビーバー型」の2代目が開発されましたが、こちらもあまり人気が出ませんでした。
1978年、3度目の正直ということでデザインを大きく刷新した3代目きょろちゃんを販売。これがようやく世間の皆様のお眼鏡にかなったらしく、「かわいい!」と一気にブームとなりました。皆さんが「きょろちゃん」と聞いて思い出すのは3代目のデザインではないでしょうか。
―――その後の人気は?
【林さん】 発売から数年後に製造は終了したのですが、その後もご家庭はもちろん、特にレトロ雑貨ファンの間で根強い人気を誇っていました。昭和を描いた映画やドラマの小道具としてたびたび登場しており、それも人気を後押しした要因のひとつだと思います。実際、オークションサイトで高値で取り引きされることもあったようです。
―――数年前に復刻したのですよね?
【林さん】 そうなんです。3代目発売から38年の時を経た2016年に復活しました。きっかけは、お客様相談室に寄せられた1本の電話でした。ある映画のワンシーンに登場したきょろちゃんを見て、「今はどうしても手に入らないのですか?」というご連絡をいただいたんです。それまでも復活を望む声はたびたびいただいていたのですが、その電話をきっかけに『きょろちゃん復活プロジェクト』が始動しました。ですが、これが一筋縄ではいかなかったんです。
―――いったい何があったのですか?